平成222010)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

22−共研−2006

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

標高適応遺伝子の時空間動態におけるジーンフローと自然選択の役割−シロイヌナズナ属野生種を例に−

フリガナ

代表者氏名

タナカ ケンタ

田中 健太

ローマ字

Tanaka Kenta

所属機関

筑波大学

所属部局

生命環境科学研究科菅平高原実験センター

職  名

助教

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

シロイヌナズナを用いた植物遺伝学では、近年の情報蓄積と技術革新を背景として、生態学的な表現型を司る遺伝子の野外多型に関心が集まってきた。これまでに、開花時期・病原抵抗性・被食防衛物質量・耐凍性などの野外変異をもたらす遺伝子が同定されている。シロイヌナズナは遺伝的多様性が低く人為分布しており、生態学的研究に必ずしも最適とはいえない。同属のミヤマハタザオ(Arabidopsis kamchatica ssp. kamchatica)は、同一緯度帯の標高30から3000mまで分布しており、この稀に見る標高適応は、生態学的にも遺伝学的にも興味深い。適応にかかわる遺伝子が、標高が作る環境傾度の中でどのように空間分布しているのを明らかにし、それを自然選択に中立な遺伝子のそれと比較することで、自然選択の有無、強度、空間スケールなどを理解することができる。そこで、環境傾度と対立遺伝子頻度の関係を明らかにする統計手法の開発を目的とした。
今回の調査・解析により、本種が大きく3つのクレードに分かれ、それは標高とは関係がなく、同じ山塊にも複数のクレードが存在する入れ子上の構造となっていることが分かった。これは本種の地史的変遷の結果であるので、この傾向から逸脱して、例えば標高と対立遺伝子頻度が相関するような遺伝子には自然選択が働いた可能性がある。ゲノム・タイリングアレイを用いて、標高によって配列が異なる遺伝子をスクリーニングしたが、集団構造を考慮しない解析では、高標高と低標高の間で一貫して変化する遺伝子は見つからなかった。今後は、集団構造を考慮した解析が必要である。また、野外調査によって、生存率や種子生産量は標高によって線形または非線型に変化することが分かった。さらに興味があるのが、集団の存続を規定しているデモグラフィックパラメーターが標高によってどのように変わるかである。これを行うためには従来の行列モデルを拡張していく必要があるので、研究打ち合わせを重ねながら新たな統計手法を開発している途上である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

田中健太・山口正樹・ 恩田義彦・小林元・ 杉坂次郎・ 河野真澄・ 工藤洋(2011)標高30〜3000mに生えるミヤマハタザオの局所適応:相互移植実験による検証, 第58回日本生態学会, 札幌

山田歩・瀧本岳・恩田義彦・田中健太(2011)生態的分化と生殖隔離:標高適域の広いミヤマハタザオについて, 第58回日本生態学会, 札幌

恩田義彦・田中健太(2011)標高によって集団存続の規定要因はどう変わるか?−標高30〜3000mに棲むミヤマハタザオを用いて, 第58回日本生態学会, 札幌

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

島谷 健一郎

統計数理研究所