平成282016)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

28−共研−2024

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

調査方法の異なる大規模言語意識調査データの比較分析

フリガナ

代表者氏名

タナカ ユカリ

田中 ゆかり

ローマ字

Tanaka Yukari

所属機関

日本大学

所属部局

文理学部

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

5千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

《目的》
 本研究の目的は、大きく以下の2点である。
 第一の目的は、調査方法の異なる同様趣旨の複数の言語意識調査データの分析とそのデータ構造分析を行うことである。
 次に、その基本的分析と構造分析を踏まえ、異なる調査方法に基づく複数の調査データを対照し、それぞれの特性を探ることである。異なる調査方法に基づく各の調査データならびに回答者の特性を探ることは、調査方法の長短を見極め、目的に応じた適切な調査計画を立てることに貢献する。
 本研究課題で分析対象とする具体的な調査データとしては、2010年に実施した「2010年全国方言意識調査」と、2015年に実施した「2015年全国方言意識web調査」という、ふたつの質問紙調査を想定した。これらの調査のうち一方は、調査員が直接出向き対面にて調査を実施したもの(以下、面接調査とする)で、他方はwebを用いた回答者自身の自記式アンケート調査によるものである。
 本研究課題を通じ、面接調査とweb調査は置き換え可能なのか、可能でない部分があるとしたら、それがどのような部分で、web調査によって得たデータをどのように考えるべきか、とりわけ従来の面接調査によって得たデータと比較するに際して注意すべき点は何か、ということを浮き彫りにする。
 さらに、回答者についても、従来の無作為抽出に基づく面接調査と、web調査とでは、居住地・年代・性別などの基本的な社会的属性が共通していたとしても、メディアや文化資源との接触頻度や態度が相当に異なることが想像される。回答者のある種の社会的属性とも捉えられるこのような異なりがデータにどのような影響を及ぼすのか、具体的な調査データに基づいて検証しておくことは、調査方法について考える新しい材料を提供することにもなると考えている。
《成果》
 本研究では、以下の研究成果を上げた。
 まず、「2015年全国方言意識web調査」データの分析に基づき、査読付論文公開(1本)、国内学会発表(1件)、国際学会発表(1件)を行った。以上の成果公開はすべて研究代表者と共同研究分担者の連名によるものである。
 次に、「2015年全国方言意識web調査」と同様の調査項目により、2016年12月にweb調査を実施し、20,000サンプルを回収した(協力率:17.22%)。併せて、web調査実施についての聞き取りなどを委託業者に対して行った。なお、この調査を実施するにあたっての研究資金は研究代表者が代表の科学研究費を利用しているが、調査票設計において本共同研究で得た知見に基づく。
 さらに、共通する調査項目を用いたオムニバス調査(調査票留置形式)も行った。調査を実施するにあたっては、統計数理研究所における本研究課題とは異なる研究費を使用した。web調査と同様、調査票設計に本共同研究課題で得た知見を活かしている。
 これら新規データも加えた同様趣旨ながら異なる調査方法によって得たデータ間の本格的な比較・分析は、来年度の課題とする。
 上記以外にも、計7回、2ヶ月に1回のペースで研究会や打ち合わせを行い、その間もメイルなどで密に情報を共有することで、研究方針の策定や調査実施、成果公開に繋げた。本共同研究構成員の都合により、研究会は統計数理研究所ではなく代表者と共同研究者の一人が所属する日本大学文理学部で行った。対面研究会に参加できなかったメンバーは、主としてメイルを通じて、随時討議等に積極的に参加した。本共同研究研究費は、統計数理研究所に所属するメンバーの研究所・日本大学文理学部間の往復交通費ならびに、メンバー間のデータ共有のためのUSBメモリスティックと研究成果公開物等印刷のためのプリンター用トナー購入費用に充当した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

《論文》
・田中ゆかり・林直樹・前田忠彦・相澤正夫(2016)「1万人調査からみた最新の方言・共通語意識 : 「2015年全国方言意識Web調査」の報告」『国立国語研究所論集』第11号,pp.117-145. 査読付
https://repository.ninjal.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=860&item_no=1&page_id=13&block_id=21
《学会発表》
・Maeda Tadahiko, Tanaka Yukari, Hayashi Naoki, Aizawa Masao(2016)「Impacts of Sociodemographic Factors on the Type of Regional Dialects Usage in Contemporary Japan」Third ISA Forum of Sociology, Sociological Studies of Language: Theory & Method Session(Austria,University of Vienna) 審査有
https://isaconf.confex.com/isaconf/forum2016/webprogram/Paper79556.html
・田中ゆかり・前田忠彦・林直樹・相澤正夫(2016)「2015 年全国方言意識Web 調査に基づく話者類型」計量国語学会第60回記念大会(日本大学文理学部)
http://www.math-ling.org/CONFs/2016Poster.pdf 審査有、事後投稿勧誘有(投稿準備中)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本研究において、公開研究会はとくに行わなかった。ただし、メンバーによる対面の研究打ち合わせを下記の通り7回実施した。

第1回
テーマ:年間活動ならびに成果公開方法等の検討
日時:2016年6月9日(木)
参加者数:3人(田中ゆかり・前田忠彦・林直樹)

第2回
テーマ:成果公開(口頭発表2種)のための準備・検討
日時:2016年6月28日(火)
参加者数:3人(田中ゆかり・前田忠彦・林直樹)

第3回
テーマ:口頭発表内容の検証ならびに論文執筆方針の検討
日時:2016年11月3日(木)
参加者数:3人(田中ゆかり・前田忠彦・林直樹)

第4回
テーマ:2016年全国方言意識Web調査実施に向けての打ち合わせ
日時:2016年11月10日(木)
参加者数:4人(田中ゆかり・林直樹・調査委託会社2名)

第5回
テーマ:2016年全国方言意識Web調査実施に向けての打ち合わせ、今後の分析方針の検討
日時:2016年12月8日(木)
参加者数:3人(田中ゆかり・前田忠彦・林直樹)

第6回
テーマ:2016年全国方言意識Web調査回収データについての確認と問題点の整理、今後の分析方針の検討
日時:2017年2月22日(水)
参加者数:5人(田中ゆかり・前田忠彦・林直樹・調査委託会社2名)

第7回
テーマ:2016年全国方言意識Web調査実施結果についての確認と問題点の整理、今後の分析方針の検討
日時:2017年3月2日(木)
参加者数:4人(田中ゆかり・前田忠彦・林直樹・調査委託会社1名)

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

相澤 正夫

国立国語研究所

林 直樹

日本大学

前田 忠彦

統計数理研究所