平成81996)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

8−共研−49

専門分類

5

研究課題名

地盤工学における逆問題への情報量統計学の利用

フリガナ

代表者氏名

ホンジョウ ユウスケ

本城 勇介

ローマ字

所属機関

岐阜大学

所属部局

工学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

逆問題の解析は近年医療、資源探査、地球物理、各工学分野等で著しい発展を見せている。これは電気的な計測技術と、データ処理技術、また計算速度の著しい向上に負うところが大きい。地盤工学の分野でも事情は同様であり、地盤工学内に研究委員会が設けられるなど、研究は活発である。提案者達は、過去に2回(1988,1993年度)この問題の基礎的な部分について共同研究を行って来たが、このたびより応用的な側面をターゲットとした共同研究を実施したい。


地盤工学の逆問題では、種々の理由のため不適切性に対処する必要がある。この研究では情報量統計学の手法を用いて、観測データと種々の事前情報をマッチングさせる研究を行っている。
今年度は、広域地下水のモデリングと、地震波の地表面付近での増幅特性の解析の2つの問題に、この手法を適用し、研究を遂行した。
(1) 広域地下水のモデリング
 新潟県六日町地区の非定常な観測データに基づいた広域地下水の逆解析問題に、赤池ベイズ情報量規準(ABIC)による拡張ベイズ法と呼ばれる逆解析手法を適用した。地盤工学の分野の逆解析を行う上で問題となる共線性は、本研究においても観測井戸が解析モデルの中央部に集中しているため、その発生が予想される。
この問題に対処するため事前情報を導入し、観測情報と事前情報の適切な重み付けをABICにより解決し、もう一つの問題となるモデル選択の問題もABICにより解決した。
本研究の最も大きな成果は、解析モデルの水頭変化を計算し、その結果を逆解析に用いていない実際の観測値と比較したことにより、ABICにより選択されたモデルの予測信頼性を確認したことである。
(2) 地震波の増幅特性
東京都江東区に設置された鉛直アレー観測より得られた、10年以上にわたる地震観測データに基づき、地盤の動的定数を逆解析により推定した。地盤の応答解析に用いたプログラムはSHAKEである。
観測データの統計的な非適切性により、簡単な最小二乗法による逆解析では、解が不安定となり、適切な動的定数の推定を行うことが出来なかった。
この問題点を解決するため、赤池ベーズ情報量基準(ABIC)を拡張ベース法と組み合わせた逆解析法が適用され、安定な解を得ることができた。
推定された結果は、地震計設置時に実施された動的三軸試験結果と比較した。せん断剛性は、逆解析結果と良い一致をみたが、減衰比は三軸試験結果よりやや大きめの値が推定された。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

本城勇介、橘川正男、小川正二(1997):拡張ベーズ法による広域地下水モデルの逆解析:非定常データに基づく場合、土木学会論文報告書 No.557/III-38
Honjo, Y., M. Sugimoto, S.Onimaru, M.Yoshizawa and H.Toyota(1997): Estimation of soil dynamic parameters based on seismic array records by the Extended Bayesian method, Prod. 9th Int. conf. of the Assoc. for Computer methods and advances in geomechanics, Wuhan, Chaina (印刷中)
Honjo, Y., S. Iwamoto, M. Sugimoto, S. Onimaru and M. Yoshizawa(1997): Inverse analysis of dynamic soil properties based on seismometer array record by the extended Bayesian method, Soils and Foundation (投稿中)
Honjo, Y. and N.Kashiwagi(1997) Matching objective and subjective information and model identification in groundwater inverse analysis by Akaike Bayesian Information criterion, Water Resources Research (投稿準備中)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 平成8年度の研究内容を次の2点に絞り実施したい。(1)弾性波ジオトモグラフィーに関する研究:研究者の一人は動燃が岐阜県土岐市の試験構内で実施した、弾性波トモグラフィーのデータの解析を続けている。この方法では、医療のトモグラフィーと異なり、投影角度がボーリング孔の位置などで限定されるため、著しい共線性が発生する。このための最適な平滑かフィルターの設計に関して、弾性波の屈折を考慮した場合を含め検討する。(2)逆解析を想定した観測計画の最適化: 地盤工学では材料が天然に形成された地盤であり、これに関する情報を数に限りのある調査より決定し、設計・施工を実施すると言う点に他の分野と大きく異なる特色がある。近年では地盤情報を施工中の観測データより得、これを逆解析により推定しようと言う試みがなされ始めている。このとき、逆解析を前提とした観測計画の最適化は重要な課題であり、この基準、組み合わせ問題の解法につき検討したい。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

柏木 宣久

統計数理研究所