昭和601985)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

60−共研−20

専門分類

3

研究課題名

生体内ダイナミカルシステム解析法の開発に関する研究

フリガナ

代表者氏名

ワダ タカオ

和田 孝雄

ローマ字

所属機関

稲城市立病院

所属部局

職  名

病院長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

15 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

生体内には,免疫系,内分泌系,代謝系をはじめとして,複雑なネットワークを形成して機能している系がいくつか存在している。これらは各々独立して一つの機能単位としても働くが,それらがさらに相互に影響しあって共同的に生命維持にあたっている。この独特な機能形態はホメオスターシスという言葉で一般的にいい表わされているが,その実態は必ずしも明らかではない。和田,赤池らは,多変量自己回帰モデルを用いてホメオスターシスを統計学的に記述する試みを行ない,その有用性を確認した。そこで,その基礎的研究を土台として,生体内のダイナミカルシステムの解析法を確立するために,生物学,生化学,臨床医学の専門家に,数学者,情報処理の専門家をまじえた総合的な研究会を開催する事を提案するに至ったものである。


今回の研究会では各研究者が各種の生体システムあるいは一般のダイナミカルシステム解析法について従来行なって来た研究内容を紹介し,そこから生体内のダイナミカルシステムに関する問題点を見出す事を中心課題とした。まず,赤池からダイナミカルシステムの解析法として,汎用性の高い多変量自己回帰モデルの紹介がなされた。次いで川嶋が工学的立場からスペクトル解析の応用面について報告し,自己回帰モデルの実用性とその限界についての見解をのべた。田中は生体制御における非線形性の重要性について出血ショックの病態を例として説明した。伊藤は臨床家が時系列解析を行なうにあたってデータベースをいかに扱うかという面から,実用的な汎用システムを紹介した。秦野は,泌尿科という臨床の特異的な一領域における時系列データの一例とその取り扱いについてのべた。山下は薬動態力学の立場からプールモデルを紹介し,飯塚は生態内酵素系の制御の特異性をアロステリック制御という面から解説した。自己回帰モデルの生体応用という面からは,赤松が皮膚痛覚について,小野がてんかん発作における脳波の解析について,松尾が小児の病態解析について,鈴木がネフローゼ患者のデータ解析について,和田が酵素網の動態解析についてのべた。以上のごとく,非常に広汎な立場から生体内システムのかかえる複雑な問題点が指摘され,その解明の手段として汎用的なシステム解析法の開発が必要となる事が明らかにされた。自己回帰モデルはそのひとつの重要なツールとなり得る可能性が示唆された。次年度においても何らかの形でこの研究会の趣旨がひきつがれ,いずれは明確な結論が得られる事を期待する。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

赤池 弘次

統計数理研究所

赤松 幹之

慶應義塾大学

荒畑 恵美子

統計数理研究所

飯塚 哲太郎

慶應義塾大学

石黒 真木夫

統計数理研究所

伊藤 昭治

IBM東京サイエンティフィックセンター

小野 憲爾

長崎大学

川島 弘尚

慶應義塾大学

佐中 孜

東京女子医科大学

鈴木 洋通

慶應義塾大学

田中 博

東京大学

中川 成之輔

東京医科歯科大学

秦野 直

琉球大学

松尾 宣武

慶應義塾大学