平成302018)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

30−共研−2026

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

異なる手法を用いた話者類型の抽出とその比較・分析

フリガナ

代表者氏名

タナカ ユカリ

田中 ゆかり

ローマ字

Tanaka Yukari

所属機関

日本大学

所属部局

文理学部

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

12千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

【研究目的】本研究課題の目的は、異なる手法を用いた話者類型の抽出とその比較・分析を行うことである。
われわれは、これまで日本全国を対象とした共通語と方言に対するほぼ同一の設問文・選択肢を用いた大規模な言語意識調査を繰り返し実施してきた。
それらの調査は、2010年以降に実施されたもので、調査方法は地域・年齢・性の構成に基づく無作為抽出による対面調査をはじめ、地域・年齢・性の構成を考慮した大規模なwebアンケートなどによるものである。
比較に用いた調査データ概要は以下の通り。
対面オムニバス調査1:「2010年全国方言意識調査」(2010年12月実施):層化三段無作為抽出法による全国に居住する16歳以上の男女4,190人(回収率32.1%、n=1,347)。
対面オムニバス調査2:「2016年近隣関係と方言についての意識調査」(2016年3月実施):層化三段無作為抽出法による全国に居住する20歳以上の男女4,000人(回収率40.0%、n=1,201)。
Webアンケート調査1:「2015年全国方言意識web調査」(2015年8月実施):web上に設置された調査サイトにアクセスして回答を求めるwebアンケート方式。委託調査会社にモニター登録している全国20歳以上の男女に調査依頼を配信。配信数の設定に際しては、地域ブロックと地域ブロックにおける性・年代別の人口比率に委託業者における平均的なデータ回収率を加味した。有効回答数は10,689(回収率28.4%)。
Webアンケート調査2:「2016年全国方言意識web調査」(2016年12月実施):webアンケート調査1とは異なる業者に委託。データ回収方法は同様。有効回答数20,000(回収率13.8%)。

【研究成果(経過)】
申請時に予定していたメンバー間の統計数理研究所における対面による研究会開催が困難であったため、随時メイル等を通じ本共同研究は遂行された。
基本的な集計データの報告(以下、「基本報告」)と潜在クラス分析による話者類型抽出分析を進めている「2015年全国方言意識web調査」について、クラスター分析を適用し、潜在クラス分析により抽出された話者類型との比較検討を行った。
併せて、すでに報告済みの「2010年全国方言意識調査」に基づく潜在クラス分析ならびにクラスター分析を適用した話者類型との比較を行った。
基本報告を行った「2016年全国方言意識web調査」についてのふたつの手法を適用した話者類型を試みた。
また共同研究者の前田は,本人の研究プロジェクトに関連して「典型的な社会調査項目における級内相関の評価」というテーマに,本研究で分析してきたような方言をめぐる意識調査またはその類似調査データを利用するという新たな課題を着想するに至った。社会調査データで調査地点にネストした個人というデータの構造を反映したマルチレベル分析を効果的に行うためには,目的変数がある程度大きな級内相関を持つことが必要である。しかしながら,特に質的な質問項目の場合,経験的には級内相関はなかなか大きくならない。ところが「方言」などのように特に地域間の差が大きい変数は,その地方性の大きさゆえに(本来の二段抽出の文脈とは離れるが)調査地点間の異質性もかなり高くなることが期待される変数である。こうした観点から,方言意識などの地方色の豊かな質問項目の分析は,一つのベンチマーク的な分析結果を提供することが期待される。
話者の類型化という本研究課題のテーマを少し離れるが,新たな研究課題に繋がりうる着想であり,機会があれば今後の共同研究の中のサブ課題と位置づけて検討を続けることが期待される。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【田中ゆかり】
著書(共編著)『時代劇・歴史ドラマは台詞で決まる!?世界観を形づくる「ヴァーチャル時代語」?』(笠間書院)(共編著者:金水敏、児玉竜一、共著者:吉川邦夫、大森洋平、編集協力:林直樹)(2018年12月)pp.001-135
論文(招待) 「方言コスプレ」と「ヴァーチャル方言:用語・概念・課題」『方言の研究』4(日本方言研究会)pp71-97(2018年9月)
論文(招待) 「情報化時代の言語コミュニケーション?媒体・手段の特性と年代差?」『日本語学』38(1)(明治書院)pp22-35(2019年1月)
コラム 「論点 「そだねー」方言萌えの時代」読売新聞(2018年5月25日)解説面12版
エッセイ「Web版! 読み解き方言キャラ 第1回「そだねー」と「記憶に残る」方言キャラ」研究社WEBマガジンLingua(2018年4月)http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/lingua/prt/18/hougen1804.html
解説記事 「Web版! 読み解き方言キャラ 第2回 土佐弁ヒーロー龍馬見参!」研究社WEBマガジンLingua(2018年5月)http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/lingua/prt/18/hougen1804.html
解説記事 「Web版! 読み解き方言キャラ 第3回 方言ヒーロー/ヒロインは幕末ものに咲く!(前編)」研究社WEBマガジンLingua(2018年6月)http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/lingua/prt/18/hougen1806.html
解説記事 「Web版! 読み解き方言キャラ 第4回 方言ヒーロー/ヒロインは幕末ものに咲く!(後編)」研究社WEBマガジンLingua(2018年7月)http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/lingua/prt/18/hougen1807.html
解説記事 「Web版! 読み解き方言キャラ 第5回 更新される『ライオンキング』のご当地方言キャラ:ティモンとプンバァ」研究社WEBマガジンLingua(2018年8月)http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/lingua/prt/18/hougen1808.html
解説記事 「Web版! 読み解き方言キャラ 第6回 方言キャラ in 宝塚」研究社WEBマガジンLingua(2018年9月)http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/lingua/prt/18/hougen1809.html
解説記事 「Web版! 読み解き方言キャラ 第7回 メディアミックスと「方言キャラ」:『幕末太陽傳』篇」研究社WEBマガジンLingua(2018年10月)http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/lingua/prt/18/hougen1810.html
解説記事 「Web版! 読み解き方言キャラ 第8回 リアルな「ヴァーチャル方言」キャラ登場の巻:ヴァーチャル方言とラップは相性がいい?! 」研究社WEBマガジンLingua(2018年11月)http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/lingua/prt/18/hougen1811.html
対談記事 「Web版! 読み解き方言キャラ 第9回V方言キャラ・年忘れ特別対談編(金水敏・田中ゆかり)」研究社WEBマガジンLingua(2018年12月)http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/lingua/prt/18/hougen1812.html
対談記事 「〈役割語〉トークライブ! 第9回:V時代語@時代ならびに翻訳 新春特別対談編(金水敏・田中ゆかり)」研究社WEBマガジンLingua(2019年01月) http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/lingua/prt/18/yakuwari1901.html
対談記事 「Web版! 読み解き方言キャラ 第10回:歌界の V 日本語 方言ラップやら何やら(金水敏・田中ゆかり 番外編)」研究社WEBマガジンLingua(2019年01月) http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/lingua/prt/18/hougen1901.html
解説記事 「Web版! 読み解き方言キャラ 第11回:進化する「方言萌え」:「方言萌えマンガ」の登場とその行方」研究社WEBマガジンLingua(2019年02月)http://www.kenkyusha.co.jp/uploads/lingua/prt/18/hougen1902.html
解説記事 「Web版! 読み解き方言キャラ 第12回(最終回):「方言キャラ」の明日はどっちだ!?」研究社WEBマガジンLingua(2019年03月)
インタビュー記事と紙面監修 「日本語社会を映す方言の変遷」『図書館教育ニュース』1492号p1少年写真新聞社(2019年03月08日)
特別講義(招待)「「方言コスプレ」とその社会的背景」(法政大学「言語心理学」(福田由紀先生)特別授業2018年5月10日(木) 13:10〜14:50 於:法政大学G402教室)
特別講義(招待)「「方言コスプレ」とその社会的背景」(早稲田大学大学院日本語教育研究科小林ミナ先生ご担当ゼミナール特別講義2018年6月28日(木) 16:30〜18:00 於:19号館508教室) 
講演(招待)「方言の未来と進化」平成30年度「山形学」どっこい方言は生きている講座第5回(主催:公益財団法人山形県生涯学習文化財団、コーディネーター:加藤大鶴、講師:ミッチーチェン)2018年10月7日13:30〜16:20 於:遊学館(山形市)


【前田忠彦】
口頭発表 前田忠彦 「典型的な社会調査項目における級内相関の評価」 第67回数理社会学会大会,
2019年3月(立命館大学).

【林直樹】
編集協力 『時代劇・歴史ドラマは台詞で決まる!?世界観を形づくる「ヴァーチャル時代語」?』(笠間書院)(共編著者:金水敏、児玉竜一、共著者:吉川邦夫、大森洋平)(2018年12月)pp.001-135

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

対面研究会は開催できなかった。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

相澤 正夫

国立国語研究所

林 直樹

日本大学

前田 忠彦

統計数理研究所