平成182006)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

18−共研−2030

専門分類

7

研究課題名

リンパ球表面受容体遺伝子の分子進化についての研究

フリガナ

代表者氏名

ワダ ヤスヒコ

和田 康彦

ローマ字

Yasuhiko Wada

所属機関

佐賀大学

所属部局

農学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

50千円

旅 費

65千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

T細胞やB細胞、NK細胞などのリンパ球表面にはいろいろな受容体が発現していることが知られている。NCR1 (Natural cytotoxicity receptor 1 ; NKp46)やLILR(leukocyte immunoglobulin-like receptor)などの遺伝子はMHC遺伝子群などと同様に、ヒトやマウスのゲノム上で高度に重複していることが知られている。そして、それらの遺伝子の重複の時期は脊椎動物形成時からほぼ最近までにわたっており、哺乳動物のゲノム進化や免疫機能の進化を解明する上でのキー遺伝子群のひとつと言える。
 そこで、NCR1遺伝子やLILR遺伝子群について、哺乳動物や鳥類での塩基配列、アミノ酸配列および遺伝子発現情報を収集し、これらの遺伝子群の分子進化と転写制御の役割について分子統計学的な解析を試みる。特に、これらの遺伝子群での情報が不足しているウシやブタにおいて、cDNAライブラリからのLILR遺伝子などの単離を試み、哺乳動物全体としてのこれらの遺伝子群の分子進化と機能分化についての研究を実施する。 
 本年度はNK細胞特異的に発現しているNCR1遺伝子のcDNA塩基配列、エキソン−イントロン構造を明らかにし、それを基にしてブタ11品種においてNCR1遺伝子のCDSの多型解析を行なった。
 ブタのNCR1アミノ酸配列と各哺乳類とのアミノ酸配列では、アミノ酸の置換率が30%〜44 %程でかなりブタNCR1とのアミノ酸の違いが明らかになった。さらに、ブタとだけでなく、他の動物種間でも同様のアミノ酸置換率の結果が得られた。
 各ドメインのアミノ酸の置換率を見てみると、シグナル領域は42 %〜52 %、免疫グロブリン様領域1は33 %〜44 %、免疫グロブリン様領域2は20 %〜25 %、Stem領域は33 %〜60 %、細胞膜領域は21 %〜52 %、細胞質領域は36 %〜69 %となった。免疫グロブリン様領域2の塩基置換率が低いことは、他の領域よりもNCR1の機能を発揮する上より重要であることを示唆している。
 ブタ11品種96個体のNCR1遺伝子のCDSにおける多型検索の結果、エキソン1に1個、エキソン3に1個、エキソン4に2個、エキソン5に1個、エキソン7に4個の合計9個のSNPが検出され、そのうち非同義置換はエキソン7のみで起きていた3個であった。また、ランドレース種特異的にエキソン4に1個のアミノ酸(アルギニン;Arg)の欠失をもたらす3塩基(CGT)の欠失が検出された。
LILRs遺伝子群については、4つのブタLILRs遺伝子クローンを得てシークエンスを行った。得られた塩基配列は全て細胞質領域が短く、細胞質領域にアルギニンを持つ活性型LILRs遺伝子であった。それらのうち2つのクローンは先頭の免疫グロブリン様領域の前に、もう一つ不完全な免疫グロブリン様領域が存在していた。残りの2つは片方のクローンが免疫グロブリン様領域を一つ失われているスプライシングバリアントであると推察された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

城崎幸介1,2、新開浩樹3、小川智子1、田中麻衣子3、粟田崇1、和田康彦2、上西博英
  「ブタNK細胞レセプターNCR1遺伝子の多型検索」
  日本動物遺伝育種学会第7回大会(動物遺伝育種研究 34(2) p.129 2006)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

柏木 宣久

統計数理研究所