平成101998)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

10−共研−65

専門分類

7

研究課題名

類洞の立体構造に影響を及ぼす肝細胞の面の数−その統計的解析

フリガナ

代表者氏名

タネムラ マサハル

種村 正美

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ヒトの正常肝と肝硬変の違いを統計的に明らかにするため、まず個々の肝細胞の面数の分布、肝細胞の類洞に接する面数を求める。この結果に基づき、コンピュータを用いた空間の多面体分割モデルにおいて、多面体面に沿って類洞を立体構築するシミュレーションを行う。シミュレーションの結果と、以前清水が類洞の立体構造について得た結果とを照合することにより、両群間における類洞の立体構造の差を生じさせているメカニズムを解明することが目的である。


共同研究者の清水は、ヒトの手術肝組織(肝細胞癌周囲の軽度の慢性肝炎)の染色標本をレーザー共焦点顕微鏡で観察し、厚さ1.013μmの連続断面像を60枚作成した。それらから全体が含まれている肝細胞50個を見つけだし、各断面における角数を求めた。そして、角数の変化により個々の肝細胞の面の数を求めた。さらに、それらが類洞に面している面の数も求めた。
50個の肝細胞の面数のヒストグラムを作成し、その分布を調べた。面数の平均値は13.02、標本不偏標準偏差は2.09であり、これらのパラメータ値に対して正規分布を当てはめたところ、カイ2乗検定で十分当てはまりがよいことが確かめられた。また、最頻値は11、肝細胞の面のうち、類洞に面する面の数の平均は3.82であった。
今回使用した材料は、正常肝細胞ではないが、慢性肝炎としては軽症のものであり、線維化も炎症細胞浸潤も軽度であるため、ほぼ正常肝に近いと考えられる。
コンピュータで等大球のランダムパッキングのシミュレーションを行い、Voronoi 分割を行った結果、多面体の面の数の最頻値は13〜14、平均は13.5である。今回の観察結果はこの平均値に近いが、最頻値に食い違いがあるのは我々の対象には多面体以外の構造物、即ち類洞が含まれているためかも知れない。
今後は、上の点を解明して、類洞構造のコンピュータ・シミュレーションを行う予定である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

清水英男、末吉徳芳、桜井達夫、園上浩司、種村正美「肝細胞は何面体?」、形の科学会誌、第13巻、2号(1998)、pp.101-102

清水英男、末吉徳芳、桜井達夫、園上浩司、種村正美「肝細胞は何面体?」、形の科学第43回シンポジウム、1998年11月20日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

肝の小葉内では、肝細胞と類洞(微小血管網)の二者により空間が充填されている。清水はトポロジーの指標を用いてヒトの正常肝と肝硬変の類洞の立体構造の違いを求めてきた。昨年度は清水は7個の肝硬変肝細胞に関して、面数および類洞に接する面数を調べた。今年度は、引き続いて正常肝細胞および必要に応じて肝硬変肝細胞について、同様の実験を行う。一方、種村は昨年度に作成したコンピュータプログラムに基づいて、多面体空間分割モデルにおいて、その面上をランダムウォークするシミュレーション実験を行う。清水が求めた結果をもとに、シミュレーション実験を行うことにより、ヒトの正常肝と肝硬変の類洞の立体構造に差異をもたらすメカニズムが解明できるものと考えられる。そのために、順天堂大学と統計数理研究所との共同研究が是非必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

清水 英男

順天堂大学