平成172005)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

17−共研−2063

専門分類

9

研究課題名

クローン植物における繁殖特性と遺伝構造の空間解析

フリガナ

代表者氏名

オオハラ マサシ

大原 雅

ローマ字

Ohara Masashi

所属機関

北海道大学

所属部局

大学院地球環境科学研究科

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

〈目的〉
この研究では、種子による有性繁殖と栄養繁殖の両方を行うクローン植物スズランについて,その
生態遺伝データを対象に、統計数学的手法により
(1)クローン植物集団のラメット・ジェネットレベルでの個体群構造とその動態を評価する指標、ま
た遺伝構造の空間的解析の新たな手法を開発することを試みること
(2)モデルやシミュレーションにより、繁殖様式を含めた生活史特性、遺伝的構造及びその相互に及
ぼす影響を明らかにすること
を目的としている。
〈経過〉
野外調査:2003年より続けている調査の継続
6月1日-20日格子点周囲1m2内のシュート・花序密度の測定コドラート内の
シュートの追跡モニタリング
7月10日-20日花序内の果実数の測定と結果率の算出
遺伝分析:9月10日-30日マイクロサテライトマーカーの開発
10月1日-12月10日遺伝分析及び解析
数理解析:1月21日ラメット・ジェネットレベルでのサイズ構造ならびに成長変化パターン
の解析
2月9日ジェネット内のラメットの分布に対する空間解析
3月1日空間的構造が繁殖成功に与える影響についてロジスティック型モデルと
シミュレーションによる検証
〈結果〉
以上の野外におけるモニタリング調査と遺伝分析によるクローン識別を合わせたデータを用い
て、統計数学的解析を行うことにより、集団レベルの解析に加え、clonal植物でこれまで困難とさ
れてきた、ラメット・ジェネットレベルでの個体群構造の評価が可能となり、同時に空間的な変化
についても定量的に捉えることができた。その結果、集団レベルでは、結果率に対して集団の空間
的遺伝構造や開花個体密度が影響し、結果率は近隣にある和合花粉を持つ異なるクローンの花数に
より、大きく左右されることが明らかになった。さらに、花密度はポリネーターの誘引する効果を
変化させ、花粉の供給効率に違いを生じさせることにより結果率に影響を及ぼすことが示唆された
(Araki et al.2005a)。一方、ラメット・ジェネットを単位とした解析から、地下ランナーによりク
ローン繁殖を行うスズランでは、ジェネット内のラメットは一定の間隔で分布し、またサイズや成
長はラメット及びジェネット間で異なることが明らかになった。従って、このような空間的遺伝構
造や成長はラメット及びジェネットレベルでの繁殖成功に影響することが示唆された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

(論文)
(1)Araki K.,Shimatani K.and Ohara M.(2005a)Floral distribution,clonal structure,and their effects on
pollination success in a self-incompatible Convallaria keiskei population in Northern Japan.Research
Memorandum:952.Plant Ecology(投稿中)
(2)Araki K.,Yamada E.and Ohara M.(2005b)Breeding system and floral visitor of Convallaria keiskei.
Plant Species Biology 20:151-155.
(3)Araki K.,Lian C.L.,Shimatani K.,and Ohara M.(2006)Development of microsatellite markers in a
clonal herb,Convallaria keiskei.Molecular Ecology Notes(投稿中).
(学会発表)
(1)荒木希和子・島谷健一郎・大原雅「Clonal植物スズランの個体群構造とその変化パターン」
第53回 日本生態学会,新潟,2006年3月。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

阿部 恵子

北海道大学

荒木 希和子

北海道大学

島谷 健一郎

統計数理研究所