平成162004)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

16−共研−2059

専門分類

9

研究課題名

炭素収支を考慮した状態依存型最適森林経営モデルの構築

フリガナ

代表者氏名

ヨシモト アツシ

吉本 敦

ローマ字

Yoshimoto Atsushi

所属機関

東北大学

所属部局

大学院環境科学研究科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

研究目的:
 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の気候変動枠組条約の中で、二酸化炭素の吸収源として森林
が規定され、世界的規模で温暖化防止策における森林の役割が重要視されるようになった。わが国では
2001年の京都議定書の批准を背景に、適正な森林管理による炭素の吸収量促進が急務となっている。
そのような状況下、森林の二酸化炭素吸収量の取引市場が構築され始め、停滞の続くわが国の森林資源
管理に新たなインセンティブを与えるものと期待されている。取引に参画するためには、個別の所有森
林における炭素固定量の推定が必要不可欠であり、推定される量を森林資源の持つ新たな付加価値とし
て、排出権取引を想定した循環型森林経営戦略を立てることが、今後地球温暖化防止策を見越したロー
カルレベルでの森林資源管理に不可欠になってくる。こうしたことを背景に、本研究の目的は、炭素収
支を考慮した最適個別森林経営モデルの構築及び炭素ビジネスの森林資源管理に及ぼす影響について
分析することである。
研究の成果(経過):
 まず、これまでに構築した炭素の収支分析モデルを用いて、林地残材など未利用であったバイオマス
をさらにエネルギー源として利用した場合について、伐採直前のスギ人工林における立木状態での炭素
貯留量を基準に、植林から製材までの一連の木材生産工程に関する炭素収支分析を行った。分析の結果,
対象プロットでの立木状態での炭素貯留量は201.53Ct/haとなり,次の丸太状態では100.92Ct/ha,さらに製
材品状態では65.16Ct/haと貯留量が減少することがわかった。さらにエネルギー消費による炭素排出量
を推定した結果,「植林・育林工程」では立木状態での炭素貯留量の0.13%,「素材生産工程」では0.39%,
そして「製材工程」では3.85%に相当する炭素が排出されることがわかった。林地残材・製材廃材の炭
素含有量は立木状態の炭素貯留量の67.66%に相当するが、仮にこれらをチップ燃料として利用すると、
熱量換算でA重油5.13×104L/haの代替となり、その燃焼で発生する炭素量は立木状態の19.33%、チッ
プ化工程での炭素排出量を考慮すると18.08%に相当する。
 次に、上記分析において使用した人工林データを基に、動的計画法による最適林分経営モデルを構築
し、最適間伐計画における炭素吸収量についての分析を行った。分析の結果、間伐による伐採木を炭素
吸収量の一部として捉えた場合、間伐・主伐による総収益の現在価値を最大化することにより得られる
最適間伐計画と、計画期間内で吸収される炭素量の最大化により得られる最適間伐計画のそれぞれから
算出される炭素吸収量には3%程度の差しか生じないことが分かった。この結果から、総収益の現在価
値最大化による最適間伐計画の基でも十分な炭素の吸収が達成できることが期待できる。また、間伐に
よる伐採木を炭素の排出と見なした場合、炭素吸収量だけの最大化の基では間伐を施さないことが最適
な計画として導かれることが分かった。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文:
柳原宏和・吉本 敦(2005)単純同齢林における林木成長パターンのクラスタリング、pp.49-69、「森林資源
管理と数理モデル」Vol.4.(近藤・吉本・松村編集)、森林計画学会出版局、東京、194p
吉本 敦・柳原宏和・能本美穂 2005)最適林分経営モデルによる間伐計画最適化と炭素吸収量、pp.71-91、
「森林資源管理と数理モデル」Vol.4.(近藤・吉本・松村編集)、森林計画学会出版局、東京、194p。
能本美穂・吉本敦・柳原和宏(2005)木材生産を通した炭素の収支分析 ?福岡県八女地域を事例として
?。日本森林学会誌(受理)
学会発表:
能本美穂・吉本敦,木材生産工程における燻煙乾燥によるバイオマス利用と炭素収支,FORMATH Kyoto
2005シンポジウム

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所

二宮 嘉行

九州大学

能本 美穂

九州大学

柳原 宏和

筑波大学