平成71995)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

7−共研−54

専門分類

7

研究課題名

外科手術を要する口蓋裂患者の顎顔面の統計的手法による形態分析

フリガナ

代表者氏名

オオツカ スミマサ

大塚 純正

ローマ字

所属機関

昭和大学

所属部局

歯学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

口蓋裂患者は咬合の基盤をなす上下顎骨に重度の不調和を有するため咬合不全の改善は容易でなく,顎骨の外科手術による改善を必要とするものも少なくない。そこで,この様な外科症例の本質を明確にするために,既に外科矯正にて治療を終了した者について,顎顔面の形態的特徴を統計的手法により,抽出し,外科症例の判定や治療方針の立案の一助としたい。


口蓋裂患者は先天的に口唇や上顎部に破裂を有するため、上顎骨の著しい劣成長や歯の形態、萌出位置の異常による反咬合を呈することが多い。従って歯科矯正治療は困難となる。
口蓋裂患者の咬合異常の改善が、歯科矯正治療単独で可能か、あるいは上下顎骨の外科手術を必要とするか、その判断を成長時期の早期の段階で決定することは容易でない。今回、治療方針が両者の何れになるのか明確になっていない、いわゆるborderline caseの早期判定の可能性について統計的手法を用いて検討した。
被験者は、矯正科初診時(混合歯列前期)に反対咬合を有する片側性唇顎口蓋裂の患者で外科手術の適応がborderlineにあるものとした。これらについて、矯正治療に外科手術を必用としたもの(OPE群)と、矯正治療単独で終了できたもの(Non-OPE群)に分類し、側貌頭部X線規格写真を用いて顎顔面の形態評価を行った。形態評価は角度と長さで計測し、初診時から成長終了時まで3段階の時期に行った。
その結果、男女について早期の段階で両群の判定に有効と思われる顎顔面の形態的な特徴の抽出に興味ある知見を得た。具体的には、男女とも初診時での両群(OPE群、Non-OPE群)の顔面形態に差は見られなかったが、成長にともなって顕著となってきた。そして、男子の外科症例となったものは、下顎枝部の短縮傾向と顎角部の開大傾向の特徴を有していた。一方、女子の外科症例では、下顎がやや大きく、成長に連れて前方に大きくなるものであった。これによって、思春期成長開始前の時期に、外科症例の判定の可能性が示唆された。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.大塚純正、大森史枝、今村一信、柴崎好伸:片側性唇顎口蓋裂患者における外科矯正の
早期判定の可能性?第一報 男子borderline caseについて?、第19回日本口蓋裂学会、
1995.7.14,15
2.大塚純正、大森史枝、今村一信、柴崎好伸:片側性唇顎口蓋裂患者における外科矯正の
早期判定の可能性?第二報 女子borderline caseについて?、第19回日本口蓋裂学会、
1995.7.14,15
3.大塚純正、大森史枝、今村一信、柴崎好伸、大隅昇:唇顎口蓋裂患者における外科矯正
判定基準の統計的評価?borderline caseについて?,日本分類学会、1995.12.22
4.S.Ohtsuka,K.Imamura,F.Ohmori,Y.Shibasaki,N.Ohsumi:An Approach to Determine
the Necessity in a Cleft Individual -comparison of craniomaxillo-facial struc-
tures in borderline case by roentogenocephalometrics-,IFCS-96,March 27-30,
1996.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究は以下の手順にて遂行する。
1)片側性唇顎口蓋裂患者で歯科矯正治療を終了した者を被験者とし,治療の内容から以下の2群に分ける。Ope群:外科手術と矯正治療の併用者,Non-Ope群:矯正治療単独にて終了した者
2)上記患者の側 頭部エックス線企画写真(セフアログラム)を原資料とし,これより顎顔面部の大きさ,位置に関する計測を行う。
3)セフアログラムの計測データを用いて患者の顎顔面の形態的特徴を統計的分類手法(クラスター化法,判別分析法)を用いて抽出し,これらと臨床所見とを突合しこれらの関連性を検討する。
*本研究は,統計的データ解析による客観的な検討が必要で,貴研究所の専門的知識による指導や助言などのご協力を是非ともお願いしたい。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

今村 一信

昭和大学

大隅 昇

統計数理研究所

柴崎 好伸

昭和大学