昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−56

専門分類

6

研究課題名

地球回転運動データの統計数理解析

フリガナ

代表者氏名

カネコ ヨシヒサ

金子 芳久

ローマ字

所属機関

国立天文台

所属部局

地球回転系

職  名

助手

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

地球回転運動を精密に決定する事は,位置天文学や地球物理学に於て,基本的に重要な問題である。本研究では,地球回転運動のシミュレーションの実施や地球回転運動データを統計数理学的に考察して,その運動の要因を解明しモデルを決定する。光学観測による地球回転運動データと新技術によるデータを比較し,それらのデータの結合をはかる。


1.光学的観測による地球回転パラメターのデータと超長基線電波干渉計(VLBI)によるデータとの結合。
光学的観測のデータは1899年から1987年まであり,VLBIによるデータは1980年から現在まである。これから,(a).6年間のデータをとり最小2乗法により年周項(1年周期の運動)とチャンドラー項(約1.2年の周期を中心とする連続スペクトルをもつ運動)の振幅と位相を求めて,(b).次にデータを1月シフトしてそれを新しいデータと考えて(a)から繰り返し解析をする。この手続きによりチャンドラー項と年周項の変化を知ることができる。また,二種類のデータを時間的に結合するときの連続性はそれらの周期項の位相や振幅の連続性に対応する。この事により接続が可能であった。
2.年周項とチャンドラー項を最小2乗法によって分離するときの特性。
最小2乗法を用いて周期解析をするとき,線形モデルがデータの周期成分を完全に表現していれば解は他の周期成分と無関係に決定する(解の直交性)。しかし,仮定周期がデータの周期と異なる場合や連続スペクトルをもつデータのとき解の周期成分は他の周期項の影響を受ける。この様な場合,線形モデルを仮定した最小2乗法の解は線形なフィルターの出力として得られるのでそのフィルターの利得関数を計算することにより解の間の影響の程度を知ることができる。この事から年周項が一定であってもチャンドラー項の影響により年周項の解析結果に変動が見られる事が説明できた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

金子芳久,若生康二郎,大江昌嗣,石川利昭。
最小二乗法による極運動の解析法
1987年度経緯度研究会集録1988年3月


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

光学観測による地球回転運動データは1899年より1986年までの87年間の蓄積がある。新技術である超長基線電波干渉計による地球回転運動データは1982年より連続的に得られている。これらのデータから,情報量規準AIC,ABICを用いる事により統計数理的に最良の地球回転運動モデルを取り出す。又,地球回転運動の理論的なモデルのパラメータを変化させてシミュレーションを行ない,それと実際のデータとの適合度をAIC,ABICを用いて調べる。統計数理研究所に於ては,AIC,ABICに関する先端的な研究を行なっていて,しかもそれらに関する多大のソフトウェアの開発及び蓄積がある。したがって本研究の実施のためには統計数理研究所に於て,討論や調査が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大江 昌嗣

国立天文台

尾崎 統

統計数理研究所