平成192007)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

19−共研−2004

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

多年生林床草本の空間的個体群動態解析

フリガナ

代表者氏名

シマタニ ケンイチロウ

島谷 健一郎

ローマ字

SHIMATANI Kenichiro

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

助教

配分経費

研究費

40千円

旅 費

105千円

研究参加者数

5 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 林床を主要な生育地とする多年生草本植物は,植物の成長に必須な光資源の乏しい環境にあるために成長が遅い。繁殖(開花・結実)にいたるまでに長い時間を要することが多く,いったん,繁殖を開始するとその後は繰り返し繁殖する生活史を持つものが多い(多回繁殖性)。我々が12年間のモニタリングを行っている林床草本クルマバハグマ(キク科)は,これまでの調査と解析から開花・結実に至るのに最短で25年程度,場合によっては150年程度を要する可能性が示唆された。また,開花可能な大きなサイズの個体の生存率は高く,平均余命が非常に長いのに対し(開花個体で平均余命は80年程度),小個体の死亡率は高く,平均余命が短い(実生サイズのもので平均余命は3-10年)ことも明らかになった。多くの林床草本が,個体群を安定的に維持するために,種子繁殖だけでなく,栄養繁殖によって繁殖しているのに対し,クルマバハグマは種子繁殖のみを行う。このように,一見,個体群の維持が難しそうなクルマバハグマで個体群加入パターンを明らかにすることを目的とした。
 12年間のモニタリングデータから,以下が明らかになった。毎年,開花個体の割合は全体の15%以上に及ぶが,その翌年の実生の加入には大きな年次変動があり,200-300個体の当年実生が出現したことが過去1999年と2005年の2回あった一方で,数個体しか確認できなかった年(2007年)もあった。個体群全体における開花頭花数はその年の気象条件に依存し,生育期間の積算気温と開花数の間に強い相関関係が見られた。開花数と散布種子数の間には相関があると考えられるが,散布種子が発芽定着する条件については,今のところ不明である。
 個体群内の開花個体の分布は一様であるが,当年実生の分布には空間的にも時間的にも大きな変動があった。当年実生が多数出現した年は2回あったが,いずれも当年実生に集中分布が見られ,集中する場所は重複した。このことから,個体群の維持に貢献する開花個体は非常に限られていることが推察された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【論文,プレプリント等】

統計数理研究所共同研究リポート219 野生植物の生活史研究における統計モデルの活用-多年生林床草本の空間的個体群動態解析-2008年2月
Satoko Kawarasaki, Shin-ichi Aikawa, Masako Kato, Kazuo Suzuki, Jun-ichiro Suzuki, Toshihiko Hara, Yoshimichi Hori, Ichiro K. Shimatani A forest herb, Pertya rigidula, lives more than 200 years: inference from 11-year monitoring and growth model. Reserch Memorandom 1058 2008/02/26
高松潔,河原崎里子,堀良通ほか (2007) 夏緑草本カニコウモリの富士山亜高山帯針葉樹林での優占機構. 富士山研究 1: 1-9

【学会】
河原崎里子ほか 林床草本クルマバハグマの個体群動態-13年間の観測と推移行列-.第55回日本生態学会大会

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

相川 真一

森林総合研究所

荒木 希和子

北海道大学

河原崎 里子

情報・システム研究機構

堀 良通

茨城大学