昭和611986)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

61−共研−55

専門分類

7

研究課題名

生活環境の異なる地域における栄養摂取と循環器疾患との関連に関する研究

フリガナ

代表者氏名

イナダ ヒロシ

稲田 紘

ローマ字

所属機関

筑波大学

所属部局

社会医学系

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

近年,生活環境の変遷は著しく,地域,職域,世代の別などにより,栄養摂取の状況は多様化しつつある。このため,栄養摂取の循環器疾患に及ぼす影響も複雑化しつつあり,脳卒中ばかりか心筋梗塞に対する影響も考慮する必要が生じてきた。そこで,本研究では,わが国の都市,農村,漁村における循環器疾患の動向を詳細に検討する。そして,これら生活環境の異なる地域の住民についての身体所見と栄養摂取状況に関する疫学調査データの処理から,これらと脳卒中,虚血性心疾患の発症との関連について検討し,こうした循環器疾患の予防対策に役立てる。


近年の生活環境の変化は著しく,地域,職域などにより栄養摂取状況は多様化し,循環器疾患に及ぼすその影響も複雑化している。本研究では,生活環境が異なり,20年以上も疫学調査を続けている秋田の農村住民,大阪の近郊都市住民,事務系企業職員,現業系企業職員の4集団におけるこの20年間の循環器疾患発生率,栄養摂取状況および身体所見の変化を検討した。
循環器疾患の発生状況では,脳卒中,とくに脳出血の発生率が低下しているが,これはとくに秋田においてきわめて顕著である。虚血性心疾患は4集団とも,この20年間低率のままであるが,事務職で最近増加傾向がみられた。
栄養摂取状況については,大阪の3集団の変化は比較的少ないが,秋田では食塩摂取量の減少,肉食などによる脂肪や蛋白質の摂取量の増加など,その変化は著しい。その結果,秋田の血圧値は年齢を問わず,最大血圧,最小血圧とも20年間に著明な低下を示した。これに対して都市の3集団では,最大血圧値は若干低下しているが,最小血圧値はむしろ上昇傾向にある。血清総コレステロール値は,秋田では平均して20mg/dlもの上昇を示した。一方,大阪の現業職と近郊住民では,20年前から10年前にかけての変化は殆んどないが,この10年間に平均値が15mg/dl上昇し,200mg/dl前後に達した。事務職では,この20年間,ほぼ200mg/dlのレベルを維持している。
以上の結果,秋田の脳卒中の大幅な減少は,栄養摂取状況の改善によるところが大きいこと,また大阪の事務職での虚血性心疾患の増加傾向は,血清総コレステロールが長年,高値を続けていることによるものではないかということが窺われた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

(1)稲田紘他:脳卒中の疫学,循環科学,16(5),2−9,1986。
(2)稲田紘他:秋田農村における脳卒中,虚血性心疾患の発生率の推移と脳卒中のリスクファクターの変化,日本公衛誌,33(8),387〜397,1986。
(3)小町喜男他:地域における循環器系を中心とする老化の実態とそれに関する環境要因についての研究,筑波大学老化特別プロジェクト研究最終報告書(印刷中)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

近年,生活環境の変遷は著しく,地域,職域,世代の別などにより,栄養摂取の状況は多様化しつつある。このため,栄養摂取の循環器疾患に及ぼす影響も複雑化しつつあり,脳卒中ばかりか心筋梗塞に対する影響も考慮する必要が生じてきた。そこで,本研究では,わが国の都市,農村,漁村における循環器疾患の動向を詳細に検討する。そして,これら生活環境の異なる地域の住民についての身体所見と栄養摂取状況に関する疫学調査データの処理から,これらと脳卒中,虚血性心疾患の発症との関連について検討し,こうした循環器疾患の予防対策に役立てる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

駒澤 勉

統計数理研究所

小町 喜男

筑波大学

嶋本 喬

筑波大学

土井 光徳

高知県土佐山田保健所