平成202008)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

20−共研−2010

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

固体地球の振動現象が電離層に及ぼす影響に関する研究

フリガナ

代表者氏名

ナガオ ヒロミチ

長尾 大道

ローマ字

Nagao Hiromichi

所属機関

海洋研究開発機構

所属部局

地球内部変動研究センター

職  名

研究員

配分経費

研究費

40千円

旅 費

3千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 最近の地球物理学分野では、地球を固体地球・海洋・大気・電離層といった階層構造として捉え、各層の構造や層間の相互作用をマクロスケールからミクロスケールまで明らかにする試みが盛んに行なわれている。具体的な成果例の一つとして、地震静穏時における固体地球の常時自由振動の発見がある(Suda et al. [2002])。この常時地球自由振動の励起源が固体地球の外部にあることははっきりとしているものの、それが大気であるか海洋であるかについては、今でも論争の的となっている(例えばFukao [2002])。このような研究をする際には、観測データに含まれる日変化や季節変化およびノイズを上手く処理しながら、求めたいモデルパラメータを同定していくことが必要である。そのため、データ同化について実績のある統計数理研究所と協力する意義は大きい。
 研究代表者は、包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)の微気圧計データをリアルタイム受信するシステムを構築している。そのデータを詳細に解析したところ、2008年6月14日に起きた岩手・宮城内陸地震に伴う微気圧変動が、震央距離417kmの夷隅微気圧観測アレイで捉えられたことを確認した。夷隅にある6つの微気圧センサーデータには、顕著な2つの波群が見られる。地震発生後約1分後に現れた1つ目の波群はレイリー波、約25分後に現れた2つ目の波群は震源域から高層大気中を伝播してきた音波である。これらの波形を定量的に説明するため、震源関数として山中ら[2008]によって求められている本地震のモーメント解を仮定し、Kobayashi [2007]が開発した固体地球−大気1次元構造に対するノーマルモード計算コードを利用して、夷隅における気圧ならびに夷隅の近くにある地震観測点における地震波の理論波形を求めた。その結果、断層の破壊速度を秒速2.8kmとし、地震発生時刻を実際の時刻より約5秒遅らせると、実際の観測データと非常によく一致することが示された。このように固体地球と大気のカップリングモデルにより、地震波と大気振動を同時に説明できたのは、世界で初めてである。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文発表(プレプリント)
・ Nagao, H., N. Kobayashi, Y. Fukao, Y. Ishihara, and S. Tsuboi, Seismic and acoustic wave excitations in a single system of the solid Earth and the atmosphere: In the case of the 2008 Iwate-Miyagi-Nairiku Earthquake, in preparation.

学会発表
・ 長尾大道, 深尾良夫, 石原靖, 幸良樹, 坪井誠司, 夷隅微気圧観測アレイで捉えられた岩手・宮城内陸地震に伴う微気圧変動, 地震学会2008年秋季大会(つくば), 2008.
・ Nagao, H., N. Kobayashi, Y. Fukao, Y. Ishihara, Y. Yuki, and S. Tsuboi, Properties of infrasound signals due to the 2008 Iwate-Miyagi-Nairiku Earthquake, AGU Fall Meeting 2008, San Francisco, 2008.
・ Nagao, H., N. Kobayashi, Y. Fukao, Y. Ishihara, and S. Tsuboi, Seismic and acoustic wave excitations in a single system of the solid Earth and the atmosphere: In the case of the 2008 Iwate-Miyagi-Nairiku Earthquake, the International Scientific Studies Conference (ISS09), Vienna, Austria, 2009.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

特になし。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所