平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−51

専門分類

6

研究課題名

松代群列地震観測システムの統計的手法による震源決定法の改良

フリガナ

代表者氏名

ミカミ ナオヤ

三上 直也

ローマ字

所属機関

地震観測所

所属部局

職  名

主任研究官

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

11 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

松代群列地震観測システムで決定された震源にみられる気象庁震源との系統的なずれ及び読み取り誤差に起因するばらつきを正しく評価し、震源の補正を行うとともに、震源決定誤差を求める。統計的手法を取り入れた群列地震観測システムの新しい震源決定法を開発する。


長野県松代にある気象庁地震観測所の群列地震観測システム(MSAS)は半径5kmほどの円周と中心の7地点にほぼ等間隔に置かれた地震計からテレメータによって同時に地震波データを集約するもので、地震波が観測されれば。これだけでも世界の広域的な震央を決めることが可能である。しかし松代周辺100km以内を除けば、決められた震央は大分実際と異なった分布をしている。この原因としては、P波やS波の不明瞭さによる到着時刻の読み取り誤差に基づくランダム(unbiased)なものと、地震波の伝播経路の速度構造の不均質性に基づく系統的(biased)なものが考えられる。
われわれの目標は松代の地震観測所の位置を原点とし、北方向から角度が始まる極座標を考え、MSASによって推定された震央の位置と真の震央の位置の系統的な偏差を関数を求めて、将来のMSAS震央から震央の補正写像を作り、これによって実際に近い震央を予測することである。真の震央の位置として、多くの観測所の地震波到達時刻データを用いて決定された気象庁震源カタログ(日本近辺)や米国地質調査所のEarthquake Data Report(全世界)の震央データを使用する。
他方、データが大量であるため上記の補正写像はかなり複雑であり、多くのパラメータを必要とする。このため写像がある程度滑らかであると仮定する。つまりバイアス関数二次元Bスプライン曲面で表現したときこれを滑らかさに関する制約のもとでの最小自乗平滑化を行う。このとき、制約もパラメータの双二次形式になっているから、事前分布が多変量正規であり、従って、事後分布も多変量正規である。かくしてベイズ尤度が計算可能となり、最適な重みはABICを最小化するものとして得る事ができる。各々の関数のパラメータの数が多ければ多い程ABICが減少するが、約100×100個までには最小ABICが収束しているようである。
上記の方法で1984〜88年間のデータによって推定された補正写像を用いて1984〜88年間のMSAS震央から世界及び日本の震央分布を求めたところ良好な結果が得られた。また残差解析の結果、震央距離の残差と方位角の残差は無相関であること、そしてMSASの震央の方位角に関する推定誤差が震央までの距離に関する推定誤差より大きく影響していることが示される。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Ogata,Y.,Kobayashi,A.,Mikami,N.,Murata,Y.and Katsura,K.
On spatial transformation for a correction of earthquake location determined by a small seismic array
system,preprint,27 July 1994.
尾形良彦、小林昭夫、三上直也、村田泰章、桂 康一
ベイズ型平滑化による震央分布の歪みの補正、第62回日本統計学会、1994年7月25日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

松代群列地震観測システムで決められた震源と、大きな地震観測網で精度良く決められた震源を比較し、震源方位及び距離ごとに群列による系統的誤差を把握する。個々の震源データの精度の評価を行い、読み取りによる震源の移動の影響を考慮するなどして、系統的誤差を求める。この結果に基づき震源補正の方法を検討する。
また、長年蓄積された地震活動データを用いて、群列地震観測システムだけでは決めにくい震源の深さ決定に利用する。これらの研究には高度な統計的手法の利用が必要で統計数理研究所の協力指導が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

青木 元

気象庁

尾形 良彦

統計数理研究所

小林 昭夫

気象庁地震火山部

斎藤 祥司

地震観測所

下田 正人

気象庁

西前 裕司

気象庁

桧皮 久義

地震観測所

本間 直樹

気象庁地震火山部

宮岡 一樹

地震観測所

涌井 仙一郎

気象庁