平成292017)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

29−共研−4202

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

7

研究課題名

分野間比較を可能とする論文生産性指標の高精度化に向けた研究

重点テーマ

学術文献データ分析の新たな統計科学的アプローチ

フリガナ

代表者氏名

ヤマモト コウ

山本 鉱

ローマ字

Yamamoto Koh

所属機関

九州工業大学

所属部局

インスティテューショナル・リサーチ室

職  名

助教

配分経費

研究費

40千円

旅 費

103千円

研究参加者数

5 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

学術論文は,研究分野によってその発表頻度,共著者数,引用文献の数といった特性が異なる.そのため,論文数や被引用数を用いて研究力を分析する際,研究分野分布が異なる機関や個人を比較することは困難である.被引用数については,論文を分野や文献タイプ,発行年を基に分類し,それぞれで一定期間の平均被引用数が1となるように正規化された指標が,ScopusやWeb of Scienceといった学術文献データベースで提供されているが,論文数については,正規化された指標が存在していない.そこで,研究分野による特性の違いを考慮した論文数の正規化手法を考案した.この手法の特徴は,一人の研究者が任意の期間に論文を発表するために要した労力を1マンパワーと定義し,効率の概念を導入した点にある.研究者が複数分野に論文を発表している場合,このマンパワーを論文数に応じてそれぞれの分野へ比例配分する.そして研究分野毎に,論文数をマンパワーの合計で割り込むことによって,論文生産性を数値化する.次に,各研究者の論文数を,分野に応じた論文生産性で正規化することによって,正規化論文数を計算する.
この計算方法では,複数分野へマンパワーを比例配分しているが,これは分野毎の論文生産性が等しいと仮定していることと同義である.しかし計算される論文生産性は分野毎で異なっており,ここに矛盾が生じている.また,論文数がゼロの研究者は研究分野が未知のため考慮されていないが,研究分野によってはその割合が大きい可能性がある(例えば人文社会学分野).この論文数がゼロの研究者は,学術文献データベース収録雑誌への論文投稿が可能であるにも関わらず投稿に至らなかった者と,そもそも研究成果が書籍や作品といった学術文献データベースに収録されない類のものである者の2つに大別することができる.正規化をする上で,前者のマンパワー(これをポテンシャルマンパワーと称する)は考慮することが望ましい.
これらの問題を解決することで,正規化論文数の精度向上と,より広い範囲の分野をまたいだ利用が可能になると考えられる.そこで本研究の目的を,(1)分野毎の論文生産性を計算する際の矛盾を解消し,(2)ポテンシャルマンパワーの適切な推定方法を検討することとした.
(1)については,一つ前の計算で求まった分野毎の論文生産性を用いて反復計算を行い,収束値を得る方法を確立した.九州工業大学のデータに当てはめた結果,標本数が多い研究分野については収束値が得られることを確認した.(2)については,九州工業大学のデータを用いて複数の分布を検討した結果,ゼロ過剰幾何分布の活用によって実際のポテンシャルマンパワーの値(13)に近い推定値(14.1)を得られることが分かった.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

今年度の研究成果は,何れの形態においても発表していない.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

福岡女子大学の藤野先生が主催する以下の北大研究集会において,途中経過を報告した.

テーマ:「学術文献データ分析の新たな統計科学的アプローチ」合同研究集会
日時:9月21日(木)14:00〜17:00
場所:北海道大学 情報基盤センター 北館4階
参加者数:7人

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

中野 純司

統計数理研究所

藤野 友和

福岡女子大学

本多 啓介

統計数理研究所