平成232011)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

23−共研−15

分野分類

統計数理研究所内分野分類

f

主要研究分野分類

1

研究課題名

確率微分方程式を用いた時系列パラメータ推定方法と計算アルゴリズム

フリガナ

代表者氏名

サトウ アキヒロ

佐藤 彰洋

ローマ字

Aki-Hiro Sato

所属機関

京都大学

所属部局

大学院情報学研究科

職  名

助教

 

 

研究目的と成果の概要

時系列の統計的特徴量を再現できる確率モデルとして確率微分方程式を取り上げ、このパラメータ推定方法と計算アルゴリズムについて研究をおこなった。確率微分方程式を利用したパラメータ推定方法では、
(1)確率微分方程式に対応するFokker-Planck方程式を用いることで、条件付き確率密度関数を求める
(2)時系列のデータ生成過程にマルコフ性を仮定することで、条件付き確率密度関数を用いた尤度関数を定義する
(3)データから尤度関数対する最尤推定法を用い、パラメータの推定を行うの方法が原理的には有効である。
しかしながら、この方法では、条件付き確率密度関数をFokker-Planck方程式の数値解として計算する必要があることから、計算量が極めて多いという問題点がある。これを克服するために、並列計算技術を利用する方法について特に研究を進めた。本研究では、確率微分方程式のひとつ、Type IV Pearson diffusion processを取り上げ、この確率微分方程式の5つのパラメータ推定を行うために、Fokker-Planck方程式を用いた方法と、局所線形化法を用いた2種類のパラメータ推定方法間でのパラメータ推定結果の比較を行った。Fokker-Planck方程式を用いる方法では、大量の計算資源が必要となるため、統計数理研究所のスーパーコンピューターシステムを用いてパラメータの推定を行った。両方法のパラメータ推定値の精度をモンテカルロシミュレーションにより確認した結果、局所線形化法を用いた場合パラメータ初期値に依存してパラメータ推定値に不安定性が存在する場合ががあることが確認された。特に、定常確率密度関数の非対称性が大きなパラメータ領域においてパラメータ推定値の不安定性が顕著に認められた。Fokker-Planck方程式を用いた方法の場合、パラメータ推定値の不安定性は局所線形化法ほどに顕著ではなかった。この原因として、局所線形化法による尤度関数の正規分布による近似が非対称性の強いパラメータ領域において尤度関数の多峰性を強め、その結果パラメータ初期値に依存した推定値を与えることが考えられる。また、計算精度の有限性に対する不安定性が原因である可能性もある。