平成302018)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

30−共研−2036

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

公的統計データにおける機械学習とシミュレーションの展開可能性

フリガナ

代表者氏名

イトウ シンスケ

伊藤 伸介

ローマ字

Ito Shinsuke

所属機関

中央大学

所属部局

経済学部

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

65千円

研究参加者数

7 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は、公的統計ミクロデータを用いて、計量経済学の伝統的手法と機械学習の比較・対象を行うだけでなく、様々な計量経済分析手法のさらなる可能性を探究することである。本研究では、税制と社会保障制度が企業の雇用戦略、家計の就業行動やワークライフバランスに対する政策的効果の評価を行うためのDifferences in Differences等の各種バイアスを考慮した現代的な推定手法の適用可能性、機械学習の方法論を援用した上での事業所・企業系等のリンクデータに基づいたモデル選択や変数選択に関する探索的な実証研究の可能性を追究している。そのための具体的なアプローチとして、本研究は、公的統計ミクロデータを用いて、経済理論に基づいた精密なモデル分析を行うだけでなく、様々なバイアスの存在に注意しながら、現代的な手法で計量分析を行うことを指向している。
2018年度には、ミクロシミュレーションを行うためのサブモデルの構築のために、「全国消費実態調査」の個票データを用いて、個々人の就業選択に対して、家計の保有不動産や金融資産が及ぼす影響について推定を行った。本分析によって、金融資産の中でリスク資産が世帯主の就業を有意に抑制することが明らかになった。また、実物資産が世帯主の就業状況に与える効果についても、就業を有意に抑制することが確認できた。こうしたことから、家計資産の蓄積が世帯主の非就業の選択を誘導しているという理論的可能性が考えられる。さらに、宅地単価についても、世帯主の就業に対して有意に負の効果があることが明らかになった。
2019年度においては、わが国で利用可能な公的統計の個票データを用いて、社会保障政策や保健衛生政策が個人の就業状態、可処分所得さらには健康状態に及ぼす影響を動態的に把握するためのミクロシミュレーションによるアプローチの可能性を一層追究していきたい。また、個人の就業行動や健康状態・介護状況が稼得所得や非勤労所得を含む可処分所得やライフスタイルに及ぼす影響について、機械学習やシミュレーションの手法を用いながら、データ特性を踏まえたパラメータの推定手法や予測手法の適用可能性もさらに模索する。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

伊藤伸介・出島敬久・村田磨理子「保有不動産・金融資産と就業との関係?全国消費実態調査の宅地単価に着目して?」『日本統計学会誌』第48巻第2号,147〜175頁,2019年3月30日,査読有り
伊藤伸介・出島敬久・村田磨理子「わが国における保有不動産・金融資産と就業状況に関する実証分析?居住地情報に着目して?」2018年度統計関連学会連合大会,中央大学,2018年9月13日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

平成30年度統計数理研究所公募型共同利用小研究会「公的統計データにおける機械学習とシミュレーションの展開可能性」, 2018年8月7日, 統計数理研究所,4名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

佐藤 慶一

専修大学

出島 敬久

上智大学

林田 実

北九州市立大学

松浦 広明

松蔭大学

南 和宏

統計数理研究所

村田 磨理子

公益財団法人 統計情報研究開発センター