昭和601985)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

60−共研−37

専門分類

7

研究課題名

急性白血病患者の病態予測

フリガナ

代表者氏名

タムラ ヨシヤス

田村 義保

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

統計計算開発センター

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

急性白血病患者の白血病細胞数の変化を予測するためのモデルを構成することを主目的とする。また,同時に病状を数量化することにより把握することも目的のひとつである。すなわち,細胞動態の予測,臨床学的特性の推定,病状の把握などを数量化することにより,治療および投薬計画に有用な知見を与えることを目的としている。


急性白血病患者の病態を予測するための統計モデルについて研究を行っている。よく知られているように,急性白血病は,体内の造血機構の制御が正常に働かなくなる病気である。白血球系細胞が未成熟な状態のまま,骨髄や抹消血中に増殖し,その他の正常な血液成分の増殖や分化が抑制される。薬剤を投与することにより,白血病細胞を無くし,かつ正常白血球数を回復させる治療が行われている。壊れてしまった人間の自己調整能力を薬剤の効果で補おうとしているのである。しかしながら,治療という行為は,人間が有している調整能力と比べると,はるかに劣っており,白血病細胞数を毎日測定することにより,薬剤投与量を調節する必要がある。また,用いられている薬剤が不幸にも,正常白血球も殺してしまうので,正常白血球の変化にも注意する必要がある。
薬剤投与量と白血病細胞数変化の関係を表す適当な統計モデルを構成することは,適切な治療計画をたてるために,非常に役立つものと考えられる。本年度は,一種類の薬剤のみが投与された場合の白血病細胞数の変化を予測する統計モデルの構成を行った。シミュレーションデータに適用して,モデルの有効性について検討した結果,十分に実用的であることが判明した。欠測値が存在していても解析できるようなモデルであるので,実際のデータに適用し易いと思う。
引き続き,複数の薬剤が投与されている場合で,白血球数の変化も同時に考える統計モデルの構成を61年度に行う予定である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

昭和61年7月 日本統計学会 盛岡で発表予定
「外部入力のある非定常過程」
Annals of the Institute of Statistical Mathematicsに投稿予定
“A Controled Nonstationary Time Series Model and Its Decomposition into Trend Component and Effect of Manipulated Variable”


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

係数が時間変化し,かつ,その動きが制御をうけているような自己回帰型の模型を構成する。このような模型のパラメーター推定を行うには,統計数理研究所で研究が進んでいるベイズ的方法を用いることが得策であると思われる。ベイズ的方法の有効性を広く知らせるのに役立つものと思われる。また,この研究は,dual controlと呼ばれている制御の一手法を,時系列解析の方法を用いて行うことにもあたっている。すなわち,この研究を実施することは,統計数理研究所および統計数理の発展に大きく寄与するものと思われる。実際にデータをとっている研究者と密に連絡をとりながら研究する必要があることは,言うまでもないことである。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

北村 新三

神戸大学

武川 公

神戸市立工業高等専門学校

森 英樹

神戸大学