平成292017)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

29−共研−1002

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

台風強度統計モデル構築を題材とするデータサイエンス教育の開発研究

フリガナ

代表者氏名

サイタ サトコ

才田 聡子

ローマ字

Saita Satoko

所属機関

北九州工業高等専門学校

所属部局

生産デザイン工学科 情報システムコース

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究では台風接近に伴い海岸部で予想される災害に対して適切な事前対策を可能にするとともに, 台風強度予測に必要な計算時間を短縮するため, 台風強度と相関の高い気象学的パラメータを用いた台風強度の統計モデル作成を目指した。
研究計画では以下のような手順で進める予定であった:
1. 多変量解析
多変量解析を用いて用量反応関係を明らかにする. 本研究に使用する台風データは, 中心の緯度経度, 中心気圧, 最大持続風速, 暴風域での最長最短半径とその方向, 強風域での最長最短半径が6時間おきに記録されている. これに1週間おきに記録された海面水温のデータを加え解析する. 
2. モデリング
相関がある変数を用いて統計モデルを構築する. その後, その性能や妥当性を評価する.

今回の研究では台風, 海水温, 風速のデータを取り込んで解析を行なった. それぞれの詳細を下に記す.
まず、海水温と6時間後の中心気圧の変化量を比較することで台風の中心気圧予測につながるのではないかと考え、解析を行った。その結果、海水温が高いほど気圧の変化量は減少し, 低いほど気圧の変化量は増加することが示された. さらに, 回帰直線では28[℃]付近を境に変化量がプラスからマイナスに転じている. 一般的に海水温が高いほど水蒸気量が増え台風勢力増加につながるとされているため, 図6の回帰直線より, 海水温が高くなるにつれて台風の中心気圧は低くなり強度は増加していることが確認できた.
次に、ウインドシア(大気中の2点間の風のベクトル差)を台風の上層と下層で比較し、台風強度との関係を調査した. その結果, ウインドシアが増加すると気圧の変化量は増加を示していることがわかった. 1-20[hPa]の帯域に比べて僅かではあるが, ウインドシアの大きさが台風勢力の発達を妨げていることが確認できた.

本研究により海水温及び, ウインドシアと台風中心気圧の関係を分布図や回帰直線を用いて調べたことで, それぞれのパラメータが台風勢力の拡大や縮小の要因になっていることは確認できた. しかし, 目標の台風強度の統計モデル作成への道のりは遠く, これらのパラメータだけでは台風が強くなるか弱くなるかも不確実なため, 統計モデルの精度は高まらない.
今後の課題として, 台風の発生や消滅といったメカニズムの科学的知見を深めて台風強度に繋がるパラメータを数多く用意することが必要となってくる. さらに, 台風中心気圧は時系列のデータであり, 台風の時間的な発達の経過を考慮するためにもベイズ統計学を取り入れて, 観測データを逐次取り込みモデルパラメータの更新も行えるようにしたい.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

第4回「太陽地球環境データ解析に基づく超高層大気の空間・時間変動の解明」
第352回生存圏シンポジウム, 平成29年度名大ISEE研究集会, 平成29年度極地研研究集会
日時:2017/09/15
場所:情報通信研究機構, 小金井本部 本館4階国際会議室
主催:超高層大気長期変動の全球地上ネットワーク観測・研究 (IUGONET)
発表タイトル「高専での科学教育におけるIUGONETの活用について」才田聡子 (北九州高専)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

中野 慎也

統計数理研究所