平成262014)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

26−共研−2052

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

7

研究課題名

公的統計を用いた高齢女性の就業分析

フリガナ

代表者氏名

テラムラ エリコ

寺村 絵里子

ローマ字

Teramura Eriko

所属機関

国際短期大学

所属部局

国際コミュニケーション学科

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究は、高年齢女性の就業状況と収入面に着目して、過去の就業履歴を考慮しつつ世帯類型別にみた特徴を把握することを目的とする。女性の就業履歴は無業期間や就業中断期間があるケースが多く、また非典型雇用比率が高いこと、このような就業履歴に伴って生涯収入も男性に比べて低い水準にあることから、高年齢者となった時の経済的リスクはより高いものと予想される。特に、離婚・未婚(非婚)の増加や平均寿命が男性に比べて相対的に長いことから女性が単身となる確率は男性に比べて高く、高年齢単身女性の世帯数は急激に増加している。しかし、単身女性の高年齢者世帯はどのような経済的リスクを抱えているのか、また、このリスクを補うために就業する高年齢女性は増えているのか、これらの点に着目した研究はまだ少ないように思われる。
 本分析では、特に単身世帯と一般世帯との比較検討を行い、就業経験に関するジェンダー差を考慮に入れつつ、女性の働き方を考える。世帯類型に着目する理由は2点挙げられる。第1に、高年齢女性の就業について考える時に、夫婦の世帯だけではなく単身世帯(本稿では離死別世帯を対象とし、未婚世帯を除く)の増加が指摘されているためである。第2に、高年齢者の就業選択に大きな影響を与える年金保険制度が、第3号被保険者制度等による世帯類型による給付制度を取っていることから、世帯類型が女性の就業選択に影響を与えていると考えられるためである。
具体的な検証方法としては、政府統計の集計データ及び既存データの二次分析を通じて意識・収入等の観点から検証を行った。得られた結果は以下の通りである。
1)2000年代における高年齢者女性の就業上の変化は、わずかながらも就業率の上昇にあらわれている。とはいえ、働いている高年齢女性は2割程度にとどまっており、すでに引退した者の就業意欲も2割程度と高いとはいえない。このような中、特に60歳代の比較的若い高年齢女性が労働市場に出ており、世帯類型別にみると女性単身世帯でこの傾向がより強い。労働市場参加にともない、この年代では収入に占める年金・恩給に依存する割合も低下傾向にある。今働いていない者で、比較的就業意欲があるのは定年によりリタイアしたと予想される被雇用者であった者である。また、過去の就業履歴は雇用者として働き続けてきた者も多いが、就業形態は非典型雇用比率が男性に比べ高い。
2)高年齢女性の世帯類型別にみた収入は、高年齢単身女性世帯について年収200万円以下が9割を超え圧倒的に他の世帯類型よりも低い。収入水準は、同年代で継続勤続年数が同じであっても、男性に比べ低い。正規雇用として勤続年数を重ねてきた比較的職歴の安定した高年齢者でも、男女で収入水準は大きく異なっている。高年齢女性の生活のゆとりに与える要因としては、月々の収入に加え、貯蓄額によるところが大きくあらわれている。また世帯類型別にみると、配偶者と離死別した場合には生活のゆとりを感じる確率が高まるが、一人暮らしの場合は負の効果が大きくあらわれる。また、2002年と2007年の2時点を比較すると、2007年にかけて収入水準が低下するとともに、生活のゆとりを感じる確率が低くなっている。
3)過去の就業履歴の有無が、高年齢となった時の就業選択の大きな要因となっている。専業主婦として過ごしてきた者の現在の就業確率は低い。さらに、先行研究同様に年齢及び健康状態は高年齢女性の就業抑制の大きな要因となっている。
 2000年代の大きな変化として、配偶者を看取ったり、離別したりして単身となった高年齢女性が徐々に仕事を持つようになっている。配偶者のケアに関してはジェンダーによる非対称があるようである。人によっては育児や親の介護を終えた後、さらに配偶者のケア役割から解放された配偶者と離死別した高年齢女性が、ようやく自分の時間を持てるようになる様子がデータからかいま見える。また、過去の就業履歴が仕事を続けてきた場合に現在の有業率が高いことから、高年齢者として労働市場に出る場合にはこれまでの就業履歴も大切であるといえる。  
高年齢女性の就業者は今後も増加するだろう。特に、高年齢単身女性世帯はさらなる増加が見込まれる。離婚・死別のみならず、増加しつつある未婚女性が将来的には高齢者単身女性の世帯を形成していくと予想される。高年齢単身女性についてのさらなる分析が今後必要とされている。また、本章にて十分に検証ができなかった年金制度や寡婦年金制度と就業・収入との関係について、さらなる検証が必要である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

「高年齢女性の就業行動」小崎敏男・永瀬伸子編『人口高齢化と労働政策』、2014年、第7章、原書房
「公的統計を用いた高齢女性の就業分析」、2015年、統計数理研究所共同研究リポートNo.346

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関