平成101998)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

10−共研−63

専門分類

7

研究課題名

歯科疾患実態調査データのコウホート分析

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

昭和32年より6年ごとに実施されている「歯科疾患実態調査」(厚生省)は、平成5年の調査で7回分のデータが蓄積され、歯科疾患の実態を捉える上で重要な資料となっている。本研究では、これまでに蓄積した7回分の歯科疾患実態調査データベースを利用し、年齢・時代・世代効果を分離するコウホート分析を適用することによって、歯科疾患の過去の実態と将来の動向を把握するとともに、コウホートモデルの新しい展開を探ることを目的とする。


本年度は主に喪失歯数のコウホート分析を行なった。
元来、歯の喪失は加齢に大きく依存するものとされ、歳をとることと歯が抜けることは密接な関係があるとされていた。本研究は、歯の保健や衛生に関する我々の興味のうち、歯の喪失について、加齢による変化の他に、時代の影響や世代による違いを明らかにすることを目的とした。
昭和32年より6年ごとに実施されている厚生省歯科疾患実態調査のうち、昭和50、56、62年、平成5年の4回分の資料から「喪失歯のある者」の割合について、年齢・時代・世代効果を分離するベイズ型コウホートモデルを適用して、一人当たり喪失歯の本数別の分析を行なった。その結果をグラフに表現し、検討を行なった。
その結果、男女とも歯の喪失においては、従来からいわれるとおり年齢効果の影響が最も大きく、ロジット尺度上で直線的に減少していた。時代効果の変化は少ないものの、最近(昭和62年から平成5年の間)の女性で歯の喪失抑制傾向が見られた。コウホート効果では、齲蝕の少ない昭和10年代生まれコウホートで歯の喪失が少なかった。また、戦後生まれで、多数歯喪失者が減少していた。さらに、男性の大正8−12年生まれコウホートは、その前後の世代に比べ喪失が抑制されていた。
以上より、歯の喪失について加齢現象として側面と、時代、世代の影響を分離して観察することができた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

那須郁夫・中村 隆・渡辺寿子・堀内俊孝:喪失歯数のコウホート分析,歯科疾患実態調査資料による,口腔衛生学会誌,48(4),502-503,1998.

那須郁夫・中村 隆・渡辺寿子・堀内俊孝:喪失歯数のコウホート分析,第47回日本口腔衛生学会総会,1998年10月16日.(パネル発表)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

[研究内容] (1)これまでに蓄積した昭和32年から平成5年までの7回分の歯科疾患実態調査データベースを用いて、歯種別・齲蝕の状態別(齲蝕罹患の状況、治療の状況、保健行動の状況)・性別に年齢階級×調査時点形式のコウホート表データを分析する。 (2)等計量線図等を作成するとともに、分析結果の新たなグラフィック表現について検討する。 (3)歯科疾患の発現に影響する生活習慣指標データをモデルに組み込んだ方法を開発する。[共同研究の必要性]歯科疾患実態調査は全国規模の継続調査であり、これまでも戦後日本における歯科疾患の実態および世代的特徴を捉えてきている。これを総括的に分析するには、統数研で開発されたベイズ型コウホートモデルを用いる必要がある。さらに、交互作用効果を含む新しいモデルの開発のためには、保健歯科の分野の研究者との協力が不可欠である。また、全7回分のデータベースをこれまでに構築してきており、その利用の点でも共同研究が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

那須 郁夫

日本大学