平成182006)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

18−共研−10

専門分類

6

研究課題名

地震波形データ解析による地球内部構造モデル推定

フリガナ

代表者氏名

タケウチ ノゾム

竹内 希

ローマ字

Nozomu Takeuchi

所属機関

東京大学

所属部局

地震研究所

職  名

助手

所在地

TEL

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E-mail

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研究目的と成果の概要

本研究の目的は、観測された地震波形データを用いて, 逆問題を解くことにより, 詳細な3次元地球内部構造モデルを推定することである。 地震及び観測点分布は大きく偏っているため, 地震波形データの持つ情報には大きな不均質が存在する。 このような不均質なデータから効率的にロバストな地球内部構造モデルを推定することは, 地球内部構造推定研究の主要な問題の1つである。 本研究では, 我々のグループが開発した逆問題解法アルゴリズム (Takeuchi & Kobayashi 2004, Geophysical Journal International) を応用し, 適切なデータの重みづけを行うことにより, ロバストな地球内部構造推定を実施する。 約 30000 本程度の地震波形記録を用い, 水平方向に約 2000 km, 鉛直方向に約 200-400 km の解像度でモデル推定を試みる。

 本年はこれまでの計算結果をまとめ, 実際に3次元地球内部構造推定を実施した. また得られた地球内部構造モデルを国際論文誌に発表した (Takeuchi 2007, Geophysical Journal International, in press)。
 得られたモデルには特筆すべき以下の2つの特徴が見出された。

1. アフリカ及び太平洋の下の二大マントル上昇流域の低速度異常構造に明確な相違が検出された。アフリカの下では顕著な低速度異常がcore-mantle 境界から1300 km程度の範囲に広がるが, 太平洋の下では300-400 km 程度の範囲に限定される。この相違はマントル上昇流に対する新たな制約となることが期待される。
2. 日本周辺のスラブの滞留に関連すると思われる高速度異常構造に地域性が検出された。伊豆・小笠原地域では高速度異常は深さ670 km の不連続面の直上まで認められるが, 東北日本弧・並びに千島弧では高速度異常は深さ530 km 程度までしか認められない。この相違はマントル下降流に対する新たな制約となることが期待される。

これらの特徴は, 従来の同種の地球内部構造モデルには見られない特徴である。局所的な稠密アレイデータの解析など, 本研究と独立なデータ解析から得られている知見と整合的であること, ならびに解像度テストから上記の特徴は現在のデータセット並びに解析手法をもってすれば十分解像できるものとみられることから, これらの特徴が有意であることが示唆される。