| 〈研究目的〉インターネット環境の急速な発展に伴い、ネットワークの適切な管理と設定が今重要
 な課題である。そのためには、ネットワークトラヒックの統計的性質を把握することが
 重要である。そこで本研究では、最初の解析として、非定常ベイズモデルを対数時系列
 データに適用し、トラヒック時系列をトレンド、曜日項、日内変動に成分分解すること
 を試みる。ここで対象となるトラヒックは、ダイアルアップ接続のネットワークセグメ
 ントにおいてSNMPで計測された1時間ごとの平均トラヒックの系列である。このよ
 うなトラヒックの成分分解はネットワークの管理、設計をする上で有用であると考えら
 れる。
 〈概要〉
 観測されるトラヒックデータyK[kbit/sec]の対数をとった系列yKΞlogyKについ
 て、トレンド成分tK、曜日項dK、日内変動sK、不規則変動成分wKからなるモデル
 yK?tK?dK?sK?wK,wK~N(0,?2)を仮定する。観測系列yKを分解するために、各
 成分について時間的滑らかさの制約を課す。トレンド成分については階差(2or3)がほ
 ぼ0に等しい制約、曜日項については、同じ日の値は一定という制約、日内変動は一周
 期(24時間)の和がほぼ0に等しいという制約を課した。このモデルは線形ガウス型空
 間モデルで表すことができる。よって、カルマンフィルタにより状態推定を行うことで、
 データ系列が与えられた下での各成分の条件付分布が推定される。
 超パラメータの推定は尤度に基づいて行う。本研究では簡便な方法として、超パラメ
 ータ値の候補をいくつか用意し、それらの組み合わせのうち尤度が最大となるものを用
 いることにした。超パラメータの候補は、観測ノイズ分散?2は10?0~10?3、?I2,?S2は
 10?1~10?9を範囲とした。得られた超パラメータは階差2では
 ?2?10?1,?I2?10?4,?S2?10?3、階差3では?2?10?1,?I2?10?8,?S2?10?4であり、最大対数
 尤度はそれぞれ−582,-621で階差2の方が良い結果を得た。
 非定常ベイズモデルをネットワークトラヒックの対数時系列に適用し、トレンド、曜
 日項、日内変動へと成分分解を行うことができた。トレンドについては、複数日に渡る
 長期的傾向が推定され、階差3の方が滑らかな結果であるが、階差2の結果には日内の
 変動がトレンドとして推定されている。曜日項と日内変動については、曜日、時間帯に
 よる利用頻度の差が表れているが、階差2と階差3では結果が異なっている。先に述べ
 たように、トレンドに日内変動の一部が抽出されてしまっているため、今後はモデルの
 改良が必要であると考えられる。
 
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