平成272015)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

27−共研−1001

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

1

研究課題名

Bi-Power Variation ratioの統計的性質に関する研究

フリガナ

代表者氏名

カワサキ ヨシノリ

川崎 能典

ローマ字

Kawasaki Yoshinori

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ある期間にn個の金融資産収益率がデータとして利用可能であるとき、それらの2乗和は実現ボラティリティ(Realized Volatility; RV)と呼ばれる。一日に取引された高頻度データの収益率から計算される、当該日のボラティリティである。これに対して、隣り合う収益率の絶対値どうし2項で構成される積和(を規格化したもの)は、Bi-Power Variation (BPV)と呼ばれ、これもひとつのボラティリティ指標であると同時に、高頻度データに基づく価格系列のジャンプの検出でしばしば用いられる基本的統計量である。
本研究の目的は、BPVを分子、RVを分母に取って計算される比=Bi-Power Variation ratio (以下BPV ratio)の統計的性質を理論的に明らかにすることである。その動機として、BPV ratioに変更が見られるときオプション取引で超過収益が期待できる可能性を示す研究が、近年実務家の分析から示唆されていることが挙げられる。これはすなわち、効率市場仮説に代表されるような通常のマーケットの状態が何らかの形で崩れていると推測される。
本研究課題では、まず効率市場仮説が成立していない状況、すなわち価格変動に記憶性がある場合を、正規分布に基づく1次の自己回帰過程に従うものと仮定して、時間間隔を狭めずに各種モーメントの評価を試みた。まず、RVとBPVの期待値に関しては容易に得られた。BPVの期待値を求めるための補題として、平均0分散1の標準正規分布に従う確率変数の絶対値の積のモーメントは、それらの相関係数を使って解析的に得られることを導いた。モンテカルロシミュレーションで確認した限り、この解析的結果と符合する実験結果が得られた。
BPV ratioの期待値も、概ねこの表現に近い結果となることが期待されたが、年度内に明確な結果を得ることはできず、またシミュレーションであたりをつけることもできなかった。1次のモーメントがわかることが第一歩であるが、目標は2次のモーメントに関する表現を得て、観察されたBPV ratioの変動が有意かどうかの判断に応用することであることを考えると、まだ道半ばというべき成果しか出せなかった。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

未発表のノートが存在するだけで、研究発表には至らなかった。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

この研究課題に関して、研究集会等の開催はなかった。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

永田 修一

関西学院大学