平成132001)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

13−共研−2063

専門分類

9

研究課題名

環境資源評価法のバイアス問題に関する研究

フリガナ

代表者氏名

テイ ヤクグン

鄭 躍軍

ローマ字

Zheng Yuejun

所属機関

統計数理研究所

所属部局

領域統計研究系

職  名

助手

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

環境資源評価法のバイアス問題に関する研究
研究代表者 統計数理研究所/総合研究大学院大学 鄭 躍軍
1 研究目的
 近年、環境資源を公共財として統計的に評価することによってその価値を与える方法は
幅広く使われている。その中で選好性依存型の仮想評価法(CVM)が環境資源の利用価値と非
利用価値をともに評価できる手法としてもっとも注目を集めている。しかし、このような
環境評価法にとっては人々がもつ真のWTPあるいはWTAをいかに正確に聞き出すかという
ことが重要な問題となっている。したがって、環境資源評価法の信頼性と妥当性を根本的
に高めるためには、各種環境評価法のバイアス問題について理論的・実証的研究を行い、
評価バイアス発生の原因を統計的に究明し、その回避策を模索することが不可欠である。
 平成12年度の共同研究では、人々に環境資源に対して信頼できる付値能力をもたせるよ
うに仮想的市場理論とその設定方法に重点をおいて、実際の仮想市場設計と調査を実施し、
CVMの理論的な基礎を考察していた。特に消費者の選好理論に基づき、WTPとWTAの原理に
ついて明らかにした。また、WTPまたはWTAの付値方式については、これまで提案された
4つの方式を検討した上で、二項選択方式(DC:Dichotomous choice)を採用する理由を明
らかにした。そこで、本研究では二項選択方式の内、一段階二項選択(Single bound DC)
方式と二段階二項選択(Double bound DC)方式の統計学的効率性について考察すると同時に、
CVMについて問題点として抽出された支払手段バイアスに焦点を当て、税金方式と基金方
式のWTPへの影響を分析することを意識した。特に適切なサンプリングによる標本調査デ
ータを基にCVMの評価バイアス問題を実証的に考察することがきわめて重要と認識し、標
本調査を計画的に実施することに至った。研究の事例としては、東京湾の「中央防波堤内
側埋立地」(ゴミの島)に想定される「海上森林公園」の環境評価を選んだ。郵送調査法に
より標本調査を実施し、CVM調査票に示す支払手段として「税金方式」と「基金方式」が
WTPにどのような影響を与えるかを明らかにすることは本研究の重要な目的の一つとして
いる。
 本年度には、環境資源の変化に対して人々のWTPあるいはWTAの評価バイアスを最小化
するための標本抽出法や調査設計、調査方法などに関する理論を中心に慎重に模索してき
たと同時に、ランダム・サンプリングに基づいた標本調査データを基に評価バイアスを分
析し、CVMの妥当性と信頼性を高めるための方策を総合的に探ることを目的とした。とり
わけ付値方式バイアスと支払手段バイアスがCVMの信頼性に与える影響を中心にデータ解
析を遂行してきた。
2.研究経過
2.1 調査の概要
 廃棄物の最終処分場として、東京湾奥の海上には埋立地が造成されてきた。その中で、
「中央防波堤内側埋立地(総面積188ha)は、1973〜86年の14年間に東京23区から出さ
れる家庭ゴミの最終処分場として利用され、現在東京都港湾局が所管する。本研究の対象
地は、この「ゴミの島」の東側部分で、かつて海面がゴミで埋め立てられた約80haの箇所
である。東京都が行った「平成13年度東京港と海上公園に関する都政モニター調査」によ
れば、調査に答えた都政モニターの約6割は東京港の周辺において海岸の樹林地や森林が
あって、水やみどりに親しめる海上公園を望んでいるという結果が示された。
 「中央防波堤内側埋立地」が、かつて東京23区から出される一般廃棄物(家庭ゴミ)の
最終処分場として利用された背景に着目し、本研究では、調査票による標本調査の母集団
を東京23区の世帯に限ることにした。個人サンプルを東京23区に住む成人を母集団とし
て、住民基本台帳からの無作為抽出とした。標本調査として、郵送調査法を採用すること
にした。調査票では、二段階二項選択方式で提示する金額の組合せとして、10通りを用意
して、サンプル全体に均等に配分して郵送した。調査の骨子をまとめてみると、次の通り
である。
(1)母集団:東京都区部20歳以上の男女
(2)サンプリング法:二段抽出法による無作為抽出
(3)付値方式:二段階二項選択方式
(4)調査方法:郵送調査法
(5)調査実施期間:2001年1月10日〜1月31日
(6)計画標本数:2,651人
(7)回収標本数:914票
2.2 支払手段バイアスの推定
 本調査では、付値方式に「二段階二項選択方式」を採用したが、最初の提示額に対する
回答結果のみを取り出せば、「一段階二項選択方式」データとして扱うこともできる。本研
究では、まず基金方式と税金方式それぞれの標本調査データより「一段階二項選択方式」
と「二段階二項選択方式」のWTPをそれぞれ推定し、支払手段別のWTPの統計的推定結果
について考察した。
 パラメトリック法とノンパラメトリック法にて得られたWTPの推定量は、税金方式の方
が基金方式よりWTPの推定値は大きい

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

ZHENG Yuejun(2001):Analysis on China's actual situation of land use and preservation
of ecological environment,Proc.of International Symposium on
Eco-environmental Conservation and 21st Century's Forestry Management:81,
Xian,China.
鄭 躍軍(2001):環境資源の仮想評価法のバイアス問題について。第69回日本統計学会講
演報告集:155-156。
鄭 躍軍(2001):ダブルバンド二項選択方式CVMの評価バイアス問題,環境経済・政策学
会2001年大会報告要旨集:16-17。
岡田圭太・鄭 躍軍・箕輪光博(2001)。東京湾ゴミ処分場埋立地における仮想森林の評価
?CVM(仮想評価法)の実践的事例?,第112回日本林学会大会要旨集:124。
鄭 躍軍・村上征勝・吉野・諒三(2002):仮想評価法(CVM)のバイアス問題に関する調査
?東京湾中央防波堤内側埋立地の環境評価を例として?,統計数理研究所研究リポート
88,pp104。
大田伊久雄・梶原 晃・白石則彦(編訳)(2002):森林ビジネス革命--環境認証がひらく持続可
能な未来--,

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

有藤 慎一

(?)日経リサーチ・システム開発局

白石 則彦

東京大学

廣嶋 卓也

東京大学

箕輪 光博

東京大学

村上 征勝

統計数理研究所

吉野 諒三

統計数理研究所