平成172005)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

17−共研−2049

専門分類

7

研究課題名

病棟業務量調査に基づく医療需給バランスおよび病棟設計に関する研究

フリガナ

代表者氏名

オオノ ユウコ

大野 ゆう子

ローマ字

Ohno Yuko

所属機関

大阪大学

所属部局

大学院医学系研究科

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

目的
近年の医療過誤の基本的原因として、病棟業務量とスタッフ数の需要供給がアンバランスであること、運営も含めて病棟設計が非効率的であることが考えられる。また、近年導入が奨励されている電子カルテが、医療過誤を減らす方向に寄与できるかどうかについてはいまだ整理された検討はない。
本研究では、病院のヒヤリハット事象の90%以上が看護師からの報告であることに注目し、病棟業務量調査として看護師のタイムスタディを実施し、電子カルテの看護業務への影響、看護師の病棟移動状況などについて分析を行った。

成果
(1) 完全電子カルテ化病院における看護スタッフの業務状況分析
 A県立がん専門病院は平成14年に開設し当初から完全電子カルテ化された病院として運営されている。看護師で新採用されたものの中には、この電子カルテしか知らないものもいるという特徴がある。タイムスタディは、日勤看護師において超過勤務が多いとの問題提起から日勤帯に絞って2病棟の各1チームの看護師全員について行った。従来と同様の分析を行い、大学附属病院、市中病院の分析結果と比較し、対象病院において勤務時間が長いこと、情報収集・記録時間が占める割合が長いこと、看護師の動線分析から患者病室の合理的でない配置などが見い出された。

(2) 完全電子カルテ化病院における電子カルテ利用時間、利用内容に関する分析
 看護師は朝、勤務の前に当日担当のすべての患者カルテを画面に開き情報収集することが義務付けられている。その他の使用方法には規定はない。調査の結果、電子カルテしかしらない看護師は日中勤務途中でカルテ入力を行い、情報収集と記録を随時行っているが紙カルテ経験者は記録を勤務後に行う傾向がみられた。電子カルテに費やした時間は6856〜11084秒(9036秒±1250秒)、うち入力に費やした時間は2987〜8364秒(5421秒±1539秒)であり、情報収集よりも入力時間の方が長かった。電子カルテに費やす時間は、勤務経験年数、受け持ち患者数には有意な相関はみられなかった。

(3) タイムスタディデータ分析の汎用化を目指したプログラム開発
 タイムスタディのデータ解析において時系列グラフ・業務割合円グラフ作成は基本的な作業であり、研究チームだけでなく臨床スタッフにも簡便に行えるようアクセス上にVisual Basicにより簡易分析プログラムを構築した。

(4) 病棟の仕事の仕方(看護業務スケジューリング)検討方法の提案
病棟業務処理のうまさは仕事の段取りに大きく影響を受けるという仮説のもとに、看護業務のスケジューリングフレームを検討した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・ 横内光子, 大野ゆう子, 笠原聡子, 沼崎穂高, 石井豊恵(2005). 業務スケジューリングからみた看護業務属性の検討. 生体医工学, Vol43(4) 762-768.

・ 横内光子, 大野ゆう子, 笠原聡子, 沼崎穂高, 石井豊恵(2005). 作業スケジューリングからみた看護業務属性の検討. 生体医工学シンポジウム2005公演予稿集CD-R.

・ 大野ゆう子(2005).療養デザインがない病院でスタッフも右往左往.医療と社会,14(4),33-45.

・ 大野ゆう子(2004).看護・医療の研究におけるタイムスタディの役割と将来動向.The Japanese Journal of Nursing Research, 37(4),3-9.

・ 笠原聡子,石井豊恵,沼崎穂高,浦梨枝子,馬醫世志子,輪湖史子,横内光子,鈴木珠水,大野ゆう子(2004).タイムスタディとは−その背景と特徴−.The Japanese Journal of Nursing Research, 37(4), 11-22.

・ 笠原聡子,石井豊恵,沼崎穂高,中村亜紀,聲高英代,原内 一,稲邑清也,大野ゆう子(2004).タイムスタディの実施.The Japanese Journal of Nursing Research, 37(4), 23-3.

・ 沼崎穂高,笠原聡子,石井豊恵,古川有香,飯沼正博,国府裕子,北村有子,萩本明子,雑賀公美子,原内 一,稲邑清也,大野ゆう子(2004).タイムスタディにおけるデータ管理.The Japanese Journal of Nursing Research, 37(4), 33-46.

・ 石井豊恵,笠原聡子,沼崎穂高,杉田 塩,古川有香,飯沼正博,国府裕子,原内 一,稲邑清也,大野ゆう子(2004).タイムスタディによる結果の解析手法.The Japanese Journal of Nursing Research, 37(4), 47-58.

・ 石井豊恵,笠原聡子,沼崎穂高,左近賢人,藤本春美,杉田 塩,門田守人,原内 一,大野ゆう子(2004).タイムスタディを円滑に進めるための実践的な諸課題とその対応.The Japanese Journal of Nursing Research, 37(4), 59-72.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大島 明

大阪府立成人病センター

中村 隆

統計数理研究所

門田 守人

大阪大学