平成302018)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

30−共研−2071

分野分類

統計数理研究所内分野分類

i

主要研究分野分類

5

研究課題名

回転円すいを用いた高粘度液体の揚水パターンの遷移

フリガナ

代表者氏名

アダチ タカヒロ

足立 高弘

ローマ字

Adachi Takahiro

所属機関

秋田大学

所属部局

理工学研究科

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

135千円

研究参加者数

5 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

頂角を下にした円すいを水に浸し回転させると,円すい外表面を膜状流れが揚水される.水より粘性の大きなニュートン流体では曵糸性の影響により,円すい外表面には糸状の揚水が現れる.このとき,円すい外表面の揚水流には遠心力が作用するにも拘らず液が飛散することはない.膜状揚水から糸状揚水への遷移現象を利用して液体から液糸をうまく生成する機構について調べる.一方で,高粘度であるが非ニュートン性を有する高分子流体の場合には,分子の配向により液が揚水されない現象が見られる.そこで本研究では,ニュートン流体と非ニュートン流体の両方について,回転数と粘度の変化に対して膜状揚水と糸状揚水の発生条件を明らかにする.また,揚水に必要な動力および周囲へ放出される液滴や液糸の分布特性を統計解析を用いて明らかにする.

微粒化あるいは細線条化して液滴や線条塊となり周囲へ放出される流体塊の粒径や直径分布等について数値解析と実験計測を行うが,その際に得られたデータの統計解析を行うことが必要となる.円すいの回転数と放出される流れの流量や線条塊の空隙密度等との相関関係を統計解析を行うことでを明らかにすることが目的である.

本年度は、グリセリン水溶液について,濃度を調整することにより揚水が開始する回転数を粘度の変化に対して調べた.粘度が水に近い場合には膜状揚水が発生し,粘度がグリセリンに近い場合には糸状揚水が発生することを明らかにした.粘度が水とグリセリンの中間値近傍では揚水の回転数が大きくなり,使用しているモーターの能力を越えたため詳細を調べることができなかったが、高出力のモーターに変更することで引き続き実験を行っている.このような揚水実験を円すいの浸水半径,テストセクションの大きさおよび円すいの頂角を変更して行った.円すいの浸水半径や頂角を変更させると液を揚水する遠心力が変わことになる.また,テストセクションの大きさを変更することで固定壁の影響を調べた.それらの間の実用的な相関式の導出を試みた.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1) 足立高弘,佐藤直也,小針直人,堀紀弘:回転円すい体の外表面を上昇する液膜流れ,日本機械学会論文集(B編) ,第76巻761号, pp. 161-163(2010) 

2) Takahiro Adachi, Naoya Sato, Naoto Kobari and Toshihiro Hori:Liquid Film Flow Rising along the Outer Surface of the Rotating Cone ,Heat Transfer-Asian Research, vol. 39 pp.492-496(2010)

3) 足立高弘,新井晶大:回転円すいの外表面を上昇する液膜流れ,[特集]注目研究in年会2010、ながれ29 pp. 451 - 453(2010)

4) 足立高弘,回転円すいを用いて生成されるミストによる酸素濃度の溶解促進,日本機械学会論文集(B編), 第79巻800号, pp. 632-635(2013?4)

5) 足立高弘,回転円すいにより生成される循環ミスト流による溶存酸素の移動促進,化学工学論文集,第41巻,第2号,pp. 78-82(2015)

6) Takahiro Adachi:Oxygen Transfer and Power Consumption in an Aeration System Using Mist and Circulation Flow Generated by a Rotating Cone,Chemical Engineering Science, vol. 126, pp. 625-632(2015)

7) Takahiro Adachi, Yutaro Takahashi and Junnosuke Okajima: Film Flow Thickness along the Outer Surface of Rotating Cones, European Journal of Mechanics / B Fluids,vol. 68,pp. 39-44(2018)

8) Adachi, T., Kubo, T., Higashiono, K., Terashima, M., Takahashi, Y: Correlation of oxygen mass transfer and power consumption in an aeration system by a rotating cone, Chemical Engineering and Processing - Process Intensification 125 105 - 111 2018

9) Takahiro Adachi, Yutaro Takahashi, Takeshi Akinaga, Junnosuke Okajima: Effect of Viscosity on Pumping-Up of Newtonian Fluid Driven by a Rotating Cone,Journal of Flow Control, Measurement & Visualization 6 57 - 65 2018

10) 足立 高弘: 回転円すいによる糸状揚水を用いた繊維製造技術への応用, ケミカル エンジニヤリング 63 ( 12 ) 15 - 18 2018

11) 足立 高弘: 回転円すいを用いた繊維製造と不織布への応用, プラスチックス ( 日本プラスチックス工業連盟誌 ) 2018

科研費の獲得状況
1) H. 23〜H. 25, 基盤研究(C),回転円すいの外表面を上昇する液膜流の生成メカニズムと微粒化 (代表足立高弘)

2) H.28〜H.30, 基盤研究(C),回転円すいを用いた遠心力場における高粘度液体の揚水遷移と液糸の生成メカニズム (代表足立高弘)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

特になし。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

秋永 剛

秋田大学

近江 春祐

秋田大学

金森 潤

秋田大学

宮里 義彦

統計数理研究所