平成192007)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

19−共研−2030

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

犯罪統計データのコウホート分析

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

NAKAMURA, Takashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

38千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

我が国は,世界の先進諸国の中では例を見ない,犯罪の少ない安全な国といわれてきた。しかしながら,全国刑法犯の認知件数は平成8年から7年連続して戦後最多を更新するなど,近年犯罪情勢は悪化の一途をたどっている。一般に,人間のライフサイクルの中で犯罪に陥る危険度は青少年期に最も高く,加齢とともに減少していくといわれているが,近年の高齢者犯罪は,高齢者人口の増加を上回る勢いで激増している。また,幼少期に戦争を経験した世代や出生人口の多い世代は,他の世代に比べて犯罪に陥る危険度が高いとの研究結果もあり,対策を十分に検討しておく必要がある。
そこで,本研究においては,戦後の日本の犯罪統計をコウホート分析し,年齢,世代及び時代の各要因について検討を加えることにより,将来,平和で安全な社会を築くために有効な対策について検討することを目的とする。
今年度においては,平成15年度から18年度までに統計数理研究所共同利用研究で実施した受刑者率,犯罪検挙者率及び非行少年率のコウホート分析を継続発展させ,昭和42年以降の39年間における少年刑法犯検挙者率について,特に傷害,暴行及び恐喝(以下「粗暴犯」という。)に焦点を当てて男女別にコウホート分析を行い,年齢・時代及びコウホート効果を分離することによって,少年非行の変化の構造について明らかにした。
その結果,判明した事項は次のとおりである。
1.年齢効果
男女とも,刑法犯全体,粗暴犯ともに,年齢効果のピークは15歳ないし16歳である。
2.時代効果
(1)刑法犯全体のピークは、男子が昭和45年前後,女子は平成16年前後である。
(2)傷害のピークは,男子が平成12年前後、女子は平成14年前後である。
(3)暴行のピークは,男女とも昭和56年前後である。
(4)恐喝のピークは,男子が昭和45‐50年前後,女子は昭和58年前後である。
3.世代効果
(1)団塊世代(昭和23年前後出生世代)は,男女とも刑法犯全体の検挙者率は低水準であるが,粗
暴犯の検挙者率はいずれの罪種も高水準である。



 (2)団塊ジュニア世代(昭和48年前後出生世代)は,男女とも刑法犯全体の検挙者率は高水準であるが,粗暴犯の検挙者率は必ずしも高水準とはいえない。同世代の粗暴犯で高水準なのは,男子の恐喝及び女子の傷害に限られる。
4.交互作用効果(年齢×時代)
昭和42年から平成17年までの39年の経過の中で,男女とも13歳前後の年少少年の検挙者率   が上昇していく傾向が認められる。
   
今後は,財産犯(窃盗,詐欺及び横領)をはじめとする他の罪種の少年刑法犯検挙者率の特質についても,詳細な分析を行っていきたい。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1. 市川 守,中村 隆(2007). 非行少年率のコウホート分析II, 犯罪心理学研究, 第45巻特別号, 80-81.(日本犯罪心理学会,福島県郡山市:ビッグパレットふくしま,2007/9/1)
2. 市川 守,中村 隆(2006). 非行少年率のコウホート分析, 犯罪心理学研究, 第44巻特別号, 80-81.(日本犯罪心理学会,兵庫県神戸市:神戸学院大学,2006/9/2)
3. 市川 守,中村 隆(2005). 犯罪検挙者率のコウホート分析, 犯罪心理学研究, 第43巻特別号, 92-93.(日本犯罪心理学会,北海道札幌市:北海道大学,2005/8/20)
4. 市川 守, 中村 隆(2004). 受刑者率のコウホート分析(II), 犯罪心理学研究, 第42巻特別号, 78-79. (日本犯罪心理学会, 東京都世田谷区:昭和女子大学, 2004/9/5)
5. 市川 守, 中村 隆(2003). 受刑者率のコウホート分析, 犯罪心理学研究, 第41巻特別号,18-19. (日本犯罪心理学会, 佐賀県神埼町:西九州大学, 2003/9/6)
6. 市川 守, 中村 隆(1992). 犯罪・非行者率に及ぼす時代・年齢・コウホート効果の分析(2), 犯罪心理学研究, 第30巻特別号, 12-13. (日本犯罪心理学会, 東京都文京区:東洋大学, 1992/9/12)
7. 市川 守, 中村 隆(1988). 犯罪・非行者率に及ぼす年齢・時代・コウホート効果の分析, 犯罪心理学研究, 26(2), 12-31.
8. 市川 守, 中村 隆(1988). 犯罪・非行者率に及ぼす年齢・時代・コウホート効果の分析,犯罪心理学研究, 第26巻特別号, 12-13. (日本犯罪心理学会, 東京都世田谷区:昭和女子大学, 1988/9/12)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催はありませんでした。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

市川 守

岐阜少年鑑別所