平成272015)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

27−共研−2025

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

イベント・スキーマと構文に関する研究

フリガナ

代表者氏名

チョウ カナコ

長 加奈子

ローマ字

Cho Kanako

所属機関

北九州市立大学

所属部局

基盤教育センターひびきの分室

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

124千円

研究参加者数

5 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究は日本語,英語に表れる構文とその背後に存在するイベント・スキーマとの関係について,大規模コーパス等を用いて統計的に分析することを目的とし研究を行った。

・二重目的語構文と情報構造の関係
日本人英語学習者の二重目的語構文の使用パターンは英語母語話者と異なることがこれまでの研究で明らかとなっている。そこで本調査では,日本語話者,英語話者に加え,母語に英語とは少し異なる二重目的語構文が存在する中国語話者を加え,学習者コーパスの分析,調査用紙を用いた実験等を通じて,情報構造との関わりから構文の背後にあるイベント・スキーマの違いを明らかにした。

・二重目的語構文と共起する名詞の関係
これまでの先行研究では主に二重目的語構文と動詞の関係に焦点が当てられてきたが,動詞と共起する名詞もまた二重目的語構文を構成する要素であることを考えると,動詞と構文のみの研究では不十分である。そこで,give の第二目的語に生じる名詞の特徴とrefuse/denyの第二目的語に生じる名詞について比較分析を行った。

・give の軽動詞用法と構文の関係について
英語の動詞giveの軽動詞用法における二重目的語構文と与格構文に現れる直接目的語の名詞について,BNCをもとに分析を行った。その結果,直接目的語の名詞には,もっぱら二重目的語構文のみで用いられ,与格構文にはほとんど現れない名詞と,与格構文でもよく使われる名詞とが存在することが分かった。さらに分析を行った結果,対象物が行為と一体化していると二重目的語構文のみで用いられ,行為から独立して対象物が存在できる場合は,与格構文でも用いられることが明らかとなった。

・sorry for と sorry about に見られる前置詞の意味の違い
英語の sorry for と sorry about は,同じ場面で用いることも可能である一方,どちらか片方しか使わないという場合もある。両者の違いを明らかにすべく,BNCを用いて共起語について分析を行った。その結果,sorry about の場合は,場所の中心へ概念化者の焦点が移行するため,その場所で発生する出来事に焦点が当たっており,about の直後には,出来事を表す表現が多く出現することが明らかとなった。一方,前置詞 for は心的方向性を表しており,概念化者の心的方向が向きやすい,つまり共感度が高い出来事の参与者を表す表現が多く出現することが明らかとなった。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究成果は,以下の共同研究リポート,および著書にまとめた。

統計数理研究所共同研究リポート357
イベント・スキーマと構文に関する研究
 植田正暢「二重目的語動詞 Give と Refuse/Deny の関連性について?予備分析」,pp. 1-14.
 川瀬義清「動詞 give の軽動詞用法と構文」,pp. 15-24.
 長 加奈子「前置詞による意味の違い:sorry for とsorry about を例に」,pp. 25-34.

 長 加奈子「学習者コーパスから見える母語の事態把握の影響?二重目的語構文とto与格構文から?」,石川有香・石川慎一郎・清水裕子・田畑智司・長加奈子・前田忠彦(編著)『言語研究と量的アプローチ(pp. 61-73)東京:金星堂.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

2015年度「言語研究と統計」共同利用研究班合同中間報告会
日時:9月27日・28日
場所:大阪大学大学院言語文化研究科(豊中キャンパス)A棟2F大会議室
参加者数:30名

言語研究と統計2016
日時:2016年3月15日(火) 10:30〜18:00/16日(水) 09:30〜16:00 
会場:統計数理研究所(東京都立川市緑町 10-3)
オーガナイザー 田畑智司(大阪大学)
指導講話 前田忠彦(統計数理研究所)
参加者数:50名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

植田 正暢

北九州市立大学

大橋 浩

九州大学

川瀬 義清

西南学院大学

前田 忠彦

統計数理研究所