平成302018)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

30−共研−2059

分野分類

統計数理研究所内分野分類

f

主要研究分野分類

8

研究課題名

南極の苔に含まれる水銀濃度から極地への汚染物質の輸送について考える

フリガナ

代表者氏名

ナガフチ オサム

永淵 修

ローマ字

Nagafuchi Osamu

所属機関

福岡工業大学

所属部局

総合研究機構 環境科学研究所

職  名

客員教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

51千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

大気への水銀排出源として人力小規模金採掘(37%)、石炭燃焼(25%)があり、この二つで地球上への排出量の62%を占めている。特に小規模金採掘は、南半球(アフリカ、中南米、インドネシア等)に多く存在し、大気大循環で南極に影響を及ぼすことは十分に考えられる。そこで南極のバイオモニタリングとして苔を使用し、水銀や鉛等による汚染状況を把握する。特に、水銀は大気中の形態が他の金属と異なり、その95%以上がガス状であり、そのうちの大部分は、Gaseous elemental mercury(ガス状の金属水銀)であり、水に溶けないため寿命が長く、半年から2年といわれている。したがって、大気大循環に乗って南極に到達する確率は高いものと考えられる。
 ここでは、大気輸送により南極に沈着する水銀量、その起源(Pb同位体比等を用いる)さらに、氷床からの水銀のre-emissionについて検討する。
本研究では、南極と日本の自由対流圏および汚染源にあるそれぞれの苔に含まれる水銀、鉛等(鉛同位体比を含む)の濃度を計測し、バックグランド濃度や汚染濃度を把握する。これにより南極の苔中の濃度がバックグランド濃度より有意に高ければ、その人為由来か自然由来かの起源を検討する。近年、自然由来とされる水銀の内訳でre-emission分が大きな問題となっている。これは、元を辿れば人為起源である。南極では温暖化で氷床が融けているというが、氷に閉じ込められた水銀のre-emissionが問題となる可能性がある。これらについても検討の必要がある。最終的には、大気大循環と関係付ける長距離輸送について検討をする。
本年度は、南極から採取した蘚苔類中の水銀濃度を観測した。蘚苔類3サンプルの分析を行った。1サンプルは昭和基地付近で採取したものであり、高濃度の水銀が見られた。昭和基地では、常時発電機が稼働しており、この影響を受けた可能性が考えられた。一方、残りの2サンプルは、人為的な汚染源の見られないところで採取したが、高濃度の水銀濃度が観測される場合もあり、南極大陸に、なんらかの汚染物質が流入している可能性がある。
このほか、蘚苔類中を標高別に採取し、現在検討を行っている。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

本年度、次の学会発表を行った。
夏季富士山頂で観測された大気中高濃度水銀の起源解析 2019年3月 NPO富士山測候所を活用する会 (永淵 修、中澤 暦、篠塚賢一、木下弾,菱田尚子、西田友規、加藤俊吾)
また、
環境科学会誌に査読付き論文「2012年と2017年秋季の自由対流圏に属する乗鞍観測所で観測した大気中水銀の動態」 (中澤 暦、永淵 修、篠塚賢一、木下 弾、西田友規、菱田尚子、三宅隆之) を投稿し、現在査読中である。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

該当ありません

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊村 智

国立極地研究所

金藤 浩司

統計数理研究所