平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−30

専門分類

3

研究課題名

非線型現象のシステム設計と予測解析の確率過程論研究

フリガナ

代表者氏名

オカベ ヤスノリ

岡部 靖憲

ローマ字

所属機関

東京大学

所属部局

大学院工学系研究科

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

自然科学・工学・社会科学・生命科学等にあらわれる非線型現象のために、KM2O−ランジュヴァン方程式論を理論的武器として、数式処理とソフトウェアの理論的開発を通じて、システム設計と構造解析の研究をふまえて、予測解析の総合的研究を行う。


統計物理学における揺動散逸定理とAlder-Wainwright効果の数学的構造を明らかにしたKMO−ランジュヴァン方程式論の離散系に対応する理論がKM2O−ランジュヴァン方程式論である。これを時系列解析に応用するために、確率論で長い間未解決であった強定常過程の非線形予測問題を予測子の計算可能なアルゴリズムを求めることで解決した。この結果を基礎に、時系列の定常性を検定するTest(S)、ふたつの時系列間の非線形因果関係の有無を判定するTest(CS)、時系列の奥に潜むダイナミクスを探りモデルを選択するTest(E)、時系列の非線形予測を行うTest(P)を提案している。
この共同研究においては、太陽の黒点、中性子からのバースト、地球の年平均気温等の気象時系列や国民総生産、円ドルレート、卸売り物価指数、株等の経済時系列や脳波、DNAの塩基配列等の生命時系列にKM2O−ランジュヴァン方程式論を適用して、これらの複雑系の奥に潜む非線形なダイナミクスを探ると共に、その将来の非線形予測を行う。
今年度においてはDNAの塩基配列を取り上げた。A,T,G,Cという文字をそれぞれ 1,−5,−1,5と定量化した塩基配列の時系列は定常性のTest(S)を通過した。上のコーディングに特別な意味はなく、KM2O−ランジュヴァン方程式論が適用できる可能性を見たかったためである。シミュレーションの実験では予測の精度は3割6分ほどであった。これをさらにあげるためには時系列間の相互作用を取り込んだ予測解析を進める必要があることを感じた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

岡部靖憲、非線型現象のシステム設計と予測解析の確率論的研究、統計数理研究所共同研究リポート59 1994年3月

岡部靖憲、複雑系の構造と予測の確率論的解析、第一回複雑系札幌シンポジウム、1994年3月10日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

多次元弱定常過程の局所理論であるKM2O−ランジュヴァン方程式論は(1)定常解析(2)因果分析(3)予測解析の3つの部分より成り立っており、これをデータ解析への応用として、実際の生の有限個のデータが与えられたとき、それが弱定常過程の実現値であるかを判定する定常テスト(S)を施し、これを通過したものに対して、因果テスト(CS)によって原因と思われるデータをともに考え、非線型予測理論に基づく非線型性のクラスを逐次取り、データの背後にある非線型現象のシステム設計(ダイナミックスを探る)し、予測解析を行う。
この研究の統計的側面の実証のためにはテスト(S)、テスト(CS)とエントロピーテスト(E)のシミュレーションを大規模に行う必要がある。
そのためには統計数理研究所におけるこれ迄の研究成果とそこへ至る研究方法は大事なものであり、伊藤栄明教授の研究課題との共通な概念は授動散逸定理であり、是非この定理の統計的側面と物理的側面を解明したい。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 栄明

統計数理研究所

金子 明人

北海道大学大学院