平成292017)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

29−共研−2

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

細胞幾何学モデル

フリガナ

代表者氏名

ホンダ ヒサオ

本多 久夫

ローマ字

Honda Hisao

所属機関

神戸大学大学院

所属部局

医学研究科

職  名

客員教授

 

 

研究目的と成果の概要

【目的】多細胞生物の形態形成はこれを構成している細胞の振舞いによってなされる。細胞の振舞いを数理的に記述する方法があれば、数理的手法が形態形成を理解することに役立つ。
 そこで、組織を構成する細胞を多角形・多面体と考えて、すべての多角形・多面体の頂点の動きを記述する運動方程式をつくっている。これにより細胞の振る舞いが数理的に表せる。この運動方程式を数値計算で解くには大きな計算が必要だが、これがスーパーコンピュータを使う理由である。これによりこれまでにないアプローチで形態形成を研究することができる。
 細胞でできたチューブがらせん状のねじれを形成することがある。哺乳類や鳥類の心臓形成初期にみられるこの現象を説明することをこころみている。
【結果】哺乳類や鳥の初期発生において心臓は左ネジ方向にねじれたヘリックスループを形成する。これははじめまっすぐだったチューブ状の原始心臓から形成される。これまでvertex dynamicsをつかったコンピュータ・シミュレーションで、直線状のチューブがループになるには、(1)チューブを縦に二分割したとき腹側が大きく拡大することが必要で、これに加えて(2)チューブ表面上で細胞が二つに分裂した後、この二つは互いに逆時計回りに微小回転を行うということが必要であった。ただし(2)の要件は現在の遺伝子発現の知識と関連づけることが困難である。そこで最近の研究で得られた、心臓形成に於いて細胞が右から左に移動するという知見を踏まえて、チューブ下方の細胞の左への移動をシミュレーションに取り入れた。チューブは左ねじ方向にねじれた。こうしてねじれを起こす要因としてこの他の可能性が出てきた。どれがもっともらしいか検討中である。

【研究成果】
<論文発表>
Tatsuzo Nagai, Hisao Honda and Masahiko Takemura
Simulation of Cell Patterning Triggered by Cell Death and
Differential Adhesion in Drosophila Wing.
Biophysical Journal, 114 (No. 4) 958-967 (2018)

<国際会議、学会などでの口頭発表>
本多久夫 「上皮シートの世界」
Mini-workshop on Mathematical Biology 2017 (北海道大学 電子科学研究所) 2017. 3/9-10

本多久夫「形態形成を遺伝子で説明するには数理モデルが必須である」
東京大学UT-UBIセミナー (東京大学 理学部4号館) 2017. 3/24

本多久夫「上皮シートの世界とそこでおこなわれる形態形成の機構」
関東非線形非平衡バイオソフトマターセミナー (明治大学駿河台キャンパス)2017. 3/25

Hisao Honda, Takaya Abe, Toshihiko Fujimori
'Cardiac looping is caused by asymmetric cell proliferation and chiral cell behavior'. The 50th Annual Meeting of the Japanese Society of Developmental Biology 
(Tower Hall Funabori, 船堀) 2017, 5/10

本多久夫、 阿部高也、藤森俊彦「チューブが螺旋に変形する」
第83回形の科学シンポジウム(金沢工業大学 金沢)2017. 6/11

本多久夫、 阿部高也、藤森俊彦
「マウス初期胚心臓の螺旋ループ形成は細胞増殖の部域差に加えて分裂細胞のキラルな振る舞いを考えると説明できる」
第27回日本数理生物学会(北海道大学工学部)2017. 10/7

Hisao Honda
'Simulations of morphogenesis of multicellular organisms by vertex dynamics' in BIRS Workshop 'Mathematics for Developmental Biology' (Banff International Research Station, Calgary, Canada). 2017, 12/12

本多久夫
「数理モデルを使っての多細胞生物の形態形成」
名古屋大学 生命理学セミナー (名古屋大学東山キャンパス 理学部 名古屋市) 2017. 12/21