平成101998)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

10−共研−77

専門分類

7

研究課題名

ヒトの発育の時系列解析

フリガナ

代表者氏名

コバヤシ マサコ

小林 正子

ローマ字

所属機関

国立公衆衛生院

所属部局

母子保健学部

職  名

室長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

発育は時間と共に変化する現象であり、その解析には時系列解析が不可欠である。しかし、国内外においてそのような研究例は少ない。そこで、本研究は時系列解析プログラム「センサス局法X-11」から「BAYSEA」、さらに「DECOMP」によってヒトの発育を解析してきた。その結果、とくに「DECOMP」は、発育に現れる波動の解析に有効であった。毎月および1日2回測定のデータも増えたので、今後もDECOMPによる解析を継続したい。


時間と共に変化する現象は時系列解析で解明する必要があり、発育や老化現象もその一つに含まれる。そこで、ヒトの発育および老化を非定常時系列解析プログラムDECOMPによって解析することを試みた。
解析対象は、同胞5人の四半世紀に亘る身長・体重の月次測定データ、およびその父親の身長の縮小に注目した月次測定データである。
【結果と考察】
1971年より5人の小児(同胞)を対象とした発育測定を開始した。CENSUS局法やBAYSEAでデータを解析すると、定説に反して多くの波動が現れた。しかし、その波動は、DECOMPによってAR過程を分離すると消えて、トレンドが滑らかになることがこれまでの解析により明らかになっている。原時系列から周期成分と不規則成分を除いたものには、トレンドとAR成分などが残ると考えられる。また、トレンドとARを合計した波動は、原時系列に近く、測定値はこれらの2成分が多く含まれると考えることができる。
AR成分の身長と体重における違いは、身長の方が体重に比べて波動が少ないが、ARの次数がはっきり定まらないことと、体重では、ARを除いた後でも波動が少し残ることなどである。これは被験者によっても異なり、その理由を明らかにしようとしているが、まだ解明できずにいる。
父親の身長は、41歳から66歳までの15年間、毎日測定しているが、時系列解析すると、一見、測定誤差と思われる波動の大部分がARの波動として取り除かれ、ヒトの身長は波動しながら縮んでいく様子が明らかになる。
今後も測定を継続し、発育および、発育の逆の現象またはマイナス方向の発育ともいうべき老化の姿についても明らかにしていきたい。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

東郷正美「身体計測値による発育学」:東京大学出版会,平成10年12月。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

1)昨年に引き続き、1971年から測定した5人の同胞の身長・体重の月次データに加えて、その他の発育変数についても、DECOMPを用いて解析する。 2)発育期から成人へ移行する過程で波動の形も変化している。AR過程や季節変動成分の変化を捉え、移行期の姿を把握すると共に、AR過程が示す波動の生物学的意味を理解する。 3)小児4人を対象に1日2回の測定が行われている。これらの記録をDECOMPで解析して発育に関する新しい知見を得る。 以上はいずれも貴研究所の時系列解析の専門家との共同研究によってはじめて実りあるものになると期待される。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

岩城 淳子

東京大学大学院

北川 源四郎

統計数理研究所

東郷 正美

神戸大学