平成252013)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

25−共研−1034

分野分類

統計数理研究所内分野分類

b

主要研究分野分類

3

研究課題名

カルシウムイメージングデータを用いた線虫の神経モデル構築

フリガナ

代表者氏名

イワサキ ユイシ

岩崎 唯史

ローマ字

Iwasaki Yuishi

所属機関

茨城大学

所属部局

工学部

職  名

助教

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

研究目的
全神経回路の構造が明らかになっている唯一の生物、線虫C.elegansにおけるカルシウムイメージングデータを利用して神経回路の動作をモデル化し、感覚系から行動制御系への情報伝達を担う神経回路の情報処理原理を明らかにする。

成果
(1) 単一神経細胞のモデル構築
線虫の神経細胞ではカルシウムイオン濃度の時間変化が神経細胞の位置によって異なること(カルシウムダイナミクスの細胞内コンパートメント化)が指摘されている。そこで、カルシウムイオン濃度に関する3次元反応拡散方程式とイオンチャネルに関する数理モデルを連立させた3次元electrodiffusionモデルを構築した。このモデルを用いて、線虫の感覚神経細胞の1つであるAWCの刺激応答をシミュレートしたが、実験データの定量的な再現には至らなかった。各イオンチャネルに関するモデルが多数のパラメータを含んでいるのに加え、それらの細胞膜上の空間分布を推定する必要があるからである。次年度ではこれらの問題点を解決していく。

(2) 神経回路のモデル構築
神経細胞の膜電位特性(I-V特性)のみに着し、膜電位のみを状態変数とした数理モデルを構築した。シミュレーション結果とカルシウムイメージングデータ(蛍光強度)を比較するために、カルシウムイオン濃度の膜電位依存関係をモデル化したのが特徴である。実験により既知の蛍光強度曲線を併用することで、膜電位のシミュレーション値から細胞内カルシウムイオン濃度と蛍光強度の定量的な推定が可能となる。線虫の感覚神経細胞の1つであるASERに対しては実験データを非常によく再現することに成功した。ただし、感覚神経細胞ASEとその下流数個の介在神経細胞からなる神経回路に対しては、実験データの再現がよくなかった。神経細胞同士を繋げているシナプス結合のモデルが適切でないか、モデルパラメータの最適化が不十分であると考えられる。次年度ではこれらの問題点を解決していく。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

徳永 旭将、吉田 亮、岩崎 唯史:「データ同化によって線虫の神経回路をまるごと読み解く 〜現状と課題」 シミュレーション Vol.32, No.4 (2013) pp.287-294.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会の開催はありません。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

宇壽山 衛

茨城大学

小沼 卓也

茨城大学

藤澤 良太

茨城大学

吉田 亮

統計数理研究所