平成302018)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

30−共研−1007

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

8

研究課題名

4次元変分法による水域水環境再現予測の向上とパラメータ修正法の構築

フリガナ

代表者氏名

イリエ マサヤス

入江 政安

ローマ字

Irie Masayasu

所属機関

大阪大学

所属部局

大学院工学研究科地球総合工学専攻

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

【研究目的】
 本申請では,閉鎖性水域(内湾,湖沼)における水環境シミュレーションにおいて,4次元変分法によるデータ同化という統計学的アプローチを用いて,赤潮などの水域の有機汚濁の指標であるクロロフィルの分布や,新たに環境基準として採用された溶存酸素(DO)の分布の再現予測精度の向上を目指すとともに,水質モデル内のモデルパラメータの修正を行い,水質モデルの改良法の構築を目指している.
【研究成果(経過)】
 30年度においては,オープンソース海洋モデルROMS(Regional Ocean Modeling System)を用いて4次元変分法の大阪湾への適用を行った.4次元変分データ同化に必要な接線形モデルとアジョイントモデルは元々ROMSの1コンパートメントとして含まれているが,水質モデルは自前のコードであり,水質モデルそれ自体,およびその接線形モデルとアジョイントモデルは著者らが独自での作成したものであるため,この検証と改良に取り組んだ.研究実施前より,水質モデル自体のクロロフィルおよび溶存酸素濃度(DO)の空間分布の再現性が十分でないことが分かっており,これの改良がデータ同化効果に及ぼす影響を評価した.モデル改良前にはデータ同化の効果が十分で無かった大阪湾奥東部において改善がみられた.また,モデル改良によってクロロフィルの観測値と同化なし計算値の差が小さくなった結果,改良後モデルによりデータ同化を行うと,動物プランクトンや硝酸態窒素の修正量が大きくなる影響が認められた.
 また,DO濃度は0を下回らない非負の値をとるが,大阪湾では夏季に無酸素化しており,値が0に近くなる.DO濃度の確率分布を正規分布であるとしてデータ同化をすると,負の値に修正されることから,対数正規分布であると仮定してデータ同化を行った.この結果,DO濃度が負になることはなくなり,状態推定におけるDOの再現精度は向上したものの,一方で,表層のクロロフィル分布の同化効果は小さくなることが示された.
 当初年度計画にあったデータ同化による水質モデルのパラメータ最適化の部分については上記の水質モデルの改良に時間がかかったため,十分ではなかった.試験的には実施しているため,次年度の計画において,より重点的に取り組む予定である.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表
野田 晃平,岡田輝久,入江政安 対数正規4次元変分法による水質実観測データの同化に関する基礎的検討 2018年流体力学会年会 2018年9月

Masayasu Irie, Kohei Noda, Teruhisa Okada: Assimilation of vertical chlorophyll and oxygen profiles using the lognormal four dimensional variational method: A case study in Osaka Bay, Japan Ocean Predict '19 2019年5月



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研究参加者一覧

氏名

所属機関

井上 凌

大阪大学

戸井 博彬

大阪大学

野田 晃平

大阪大学

山西 悟史

大阪大学