平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−92

専門分類

8

研究課題名

縄文時代の社会構造に関する統計的分析

フリガナ

代表者氏名

ウエキ タケシ

植木 武

ローマ字

所属機関

共立女子短期大学

所属部局

生活科学科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

縄文時代の遺跡の発掘だけでも年間数千を数える現在、膨大なデータの蓄積がみられる。その分析は、たまたま目に止まったデータをもとに研究者が自分の「カンピュータ」を利用して行うもので、この意味では非常に恣意的である。そこで、住民のパターン、生業活動、遺物製作技術等の問題を、計量分析を通して解析し、考古学における新しい計量分析の領域を確立する。


全国に多数存在する縄文貝塚のうち、約半数は千葉県に集中している。貝塚研究は、考古学者が精力的に進めてきたのだが、皮肉なことに、研究が進めば進むほど、データの量が膨大となり、貝塚社会の構造について、ひとりの研究者の頭の中では集約しきれなくなった。われわれのアプローチは、千葉県に残存する全貝塚例(550例)の基礎データを入力したデータベースを作成し、これをもとに集計を行うことにある。極力、主観を排除したアプローチで、この種の研究では初めての試みである。結果は以下のごとくである。
(1)県内でも、特に千葉市、市川市、松戸市に縄文貝塚が集中する。 (2)現況は、畑になっててるところが圧倒的に多いが、次は山林、宅地である。 (3)形態は、地点が多く、点列、馬蹄型(環状)と続き、弧状はわずか2例である。(4)保存状況は、良好(18%)、一部破壊(30%)、半壊(9%)、ほとんど消滅(25%)、消滅その他(18%)となる。 (5)貝層性格は純かん(45%)、主かん(42%)、半かん・半淡(4%)、主淡・純淡(9%)となる。 (6)出土貝は、ハマグリ、アサリ、アカニシ、サルボウ、シオフキと続く。
(7)時期区分は、後期と中期が最多で、次に前期、早期、晩期と続く。 (8)発生と消滅をみると、中期に発生する貝塚が多く、後期に消滅する貝塚が多い。 (9)土器型式では、田戸上・下層、茅山上・下層、黒浜、諸磯、阿玉台・勝坂と増加してゆき、加曽利Eと堀之内1でピークに達し、後は加曽利B、安行1,2,3と次第に消滅する。 (10)遺構では、土こうと小竪穴が多く、それに貯蔵穴と袋状ピットが続く。
(11)土製品では、土器片錘、土偶、板状土製品、耳飾が多い。 (12)石製品では、磨製石斧、石鏃、打製石斧、石皿、敲石、磨石、凹石と続く。 (13)骨角器では、骨角製針、装飾品、ヤス状刺突具、牙製装身具、釣針が多い。 (14)魚骨では、クロダイ、スズキ、マダイ、サメ類、エイ類、フグ類、コチ、ボラと続く。 (15)鳥獣骨では、シカ、イノシシ、イヌ、タヌキ、ウサギ、ガンカモ、クジラ、サル等が特に多い。
この結果を、各部門の専門家に聞いたところ、経験をもとにした『カンピューター』と良く一致するという意見であった。これらは、縄文貝塚の社会構造を復元する上で骨組となるもので非常に貴重な資料となった。次のステップとして、縄文貝塚の典型的モデルの構築を予定している。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

植木武・村上征勝 千葉県貝塚データベースとその計量分析−データベースの構築と基礎集計 第5回考古学におけるコンピュータ利用の現状 5:80-91 1992年3月.帝塚山大学
植木武・村上征勝 千葉県貝塚データベースとその計量分析−基礎集計とその分析 考古学における計量分析(2):27-34 1992年9月.統計数理研究所


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

国立歴史民族博物館、国立民俗学博物館、奈良国立文化財研究所等で、考古資料のデータベース作成が少しずつ進められているが、いずれもそれ以上の分析は行われていない。つまり、統計分析に明るい考古学者が皆無であることが、その原因である。そこで、統計学を専門とする研究者とタイアップして、共同研究を進めたい。データベース作成のためのデータの計量化、データ分析に適する統計手法の選択、ならびに分析実行等の研究をする予定である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

小沢 一雅

大阪電気通信大学

堅田 直

帝塚山大学

小杉 康

明治大学

後藤 和民

創価大学

杉山 秀広

群馬県教育委員会

照井 武彦

国立歴史民俗博物館

村上 征勝

統計数理研究所