平成282016)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

28−共研−2002

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

脳神経の自励的同期活動を生成するミニマムネットワーク構造の推定

フリガナ

代表者氏名

オケ ヨシヒコ

尾家 慶彦

ローマ字

Oke Yoshihiko

所属機関

兵庫医科大学

所属部局

生理学講座生体機能部門

職  名

助教

配分経費

研究費

40千円

旅 費

32千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 ニューロンやアストロサイトの自励的な同期活動は、脳内での情報伝達やネットワークの発達などに重要な機能である。この自励的同期活動の発生・維持は、局所的な神経回路や個々の細胞が持つ特性に依存していると考えられており、個々の細胞の挙動やネットワークのダイナミクスについては様々な研究が行われてきた。しかしながら、自励的活動に必要なネットワーク構造やネットワーク内での呼吸細胞の活性化順序(情報伝達経路)などネットワーク自体の持つ性質・機能と個々の呼吸細胞の活動の関連については未だ明らかにされていない。
 そこで、本研究では、自励的同期活動の生成メカニズムに迫るために、自励的同期活動を行う組織の一例として呼吸リズムを生成する脳幹部呼吸中枢に注目し、その自励的同期活動を生成しているミニマムネットワーク構造を推定することを目指す。具体的には、呼吸リズム生成に関与するペースメーカー領域の一つであるpreBotzinger complex(preBotC)を含むスライス標本(呼吸スライス)を使用して、自励的同期活動を行うニューロン及びアストロサイト(以下、呼吸細胞という)の活動の同時記録を二光子顕微鏡によるカルシウムイメージング法で行い、その結果の詳細な時空間解析を実施する。
 平成28年度は、興奮性ニューロン、GABA抑制性ニューロン、グリシン抑制性ニューロンが区別可能な遺伝子組換えマウスを使用して前年度に記録した各種呼吸細胞の活動記録の解析をさらに進めた。これまでに、自励的同期活動時に活性化する呼吸細胞の活性化順序や組み合わせは、自励的同期活動毎に確率的に変化するが緩やかな規則性を示すことを我々は明らかにしている。今年度に行った解析の結果、その穏やかな規則性は呼吸細胞の種類に依存しているのではないかと言う結果が得られた。今後、さらに多くの実験記録の解析を行い、この現象について明らかにする予定である。また、自励的同期活動毎に呼吸細胞の組合せが変化することから、これまで呼吸細胞を検出する際に行っていたpreBotC部位の局所フィールド電位記録(Local Field Potential : LFP)と各細胞のイメージングデータの相互相関解析を自励的同期活動毎に行った。その結果、従来のイメージングデータ全体を使った相互相関解析では検出されていなかった呼吸細胞が検出された。この方法で検出した呼吸細胞のプロファイルは、レーザー光で呼吸細胞を1つずつ焼却除去することによって変化していたことから、因果性解析で考慮すべきニューロングループについての知見が示唆された。来年度は、この因果性解析をさらに詳細に進めていくとともに、細胞の焼却除去実験または細胞種特異的な阻害剤を利用した阻害実験例を増やし、より多くの実験例に対して因果性解析を行ってミニマムネットワーク構造に迫る。
 より詳細なミニマルネットワーク推定に向けて、今後は、呼吸細胞をより多くの種類に分類したうえでの各呼吸細胞間の関係性の解明も目指していく。そのため、今年度は遺伝子組換え動物の使用だけでは区別できない細胞を同定するために免疫染色法の条件・使用の可否についても検討を行った。その結果、グリシン合成酵素、GAD67、NK1R、Somatostainなど各種呼吸細胞で発現している蛋白質陽性細胞を呼吸スライスで検出する条件を確認した。カルシウムイメージングを行った呼吸スライスに対して免疫染色を施し、そのカルシウムイメージング像と免疫染色像をマッチングさせる技術の開発にも次年度は取り組む予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【学会発表(国内)】
Y. Oke, F. Miwakeichi, Y. Oku, S. Besser, J. Hirrlinger, S. Huelsmann, Rhythmic activation patterns of excitatory/inhibitory inspiratory neurons in the pre-Botzinger complex of the mice medulla slice(マウス延髄スライス標本のpre-otzinger complexにおける自発的同期活動を起こす興奮性ならびに抑制性の吸息性ニューロンの活性化パターン), The 94rh Annual Meeting of The Physiological Society of Japan(第94回日本生理学会大会), Hamamatsu, Japan(2017年) (Symposium session: Multi-level understanding of the respiratory neuron network function: From microcircuit in medullary slices to freely moving conscious animals)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

主催した研究会は無い

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

染谷 博司

東海大学

三分一 史和

統計数理研究所