平成212009)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

21−共研−4107

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

サンゴメタ集団再生に向けたオニヒトデ駆除計画への取り組み−時空間モデルによる動態予測−

重点テーマ

フィールド生態学と統計数理

フリガナ

代表者氏名

サカイ カズヒコ

酒井 一彦

ローマ字

Sakai Kazuhiko

所属機関

琉球大学

所属部局

熱帯生物圏研究センター

職  名

教授

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

沖縄本島周辺のサンゴ群集は、1998年のサンゴ白化現象により壊滅的打撃を受けた。その回復にはサンゴ幼生の新規加入が必須であるが、サンゴ捕食者のオニヒトデによって親サンゴが捕食されている。サンゴ群集の局所動態、幼生の分散、オニヒトデの移動など、様々な空間スケールの動態を考慮したオニヒトデの管理計画が求められている。本研究では、まずサンゴ群集の空間動態を、空間統計学的手法を用いて明らかにすることを目的とした。
 サンゴは浮遊幼生期が終わると他の生物が居ない空き空間に着底し、その場に固着して成長する。近傍が込み合うと大きくなる事はできないが、中には触手を伸ばして近隣個体を攻撃する種もいる。空間を巡る間接的/直接的競争は、個体の分布や集中度などの空間配置に影響を及ぼすと考えられるが、今まで統計的な解析は行われてこなかった。
 本研究では、サンゴ群集調査の一般的手法である方形区の個体配置地図を対象に、空間解析の手法を用いて、種の分布が、個体の競争能力の優劣にどのような影響を受けるかを調べた。そのために、個体サイズを考慮した空間統計量を開発した。具体的には2個体の距離を測る際に、従来用いられていた中心間距離ではなく、個体の端点間距離(最短距離)を用いた。また、分布のランダム性を検討するために、様々な大きさの円が重ならないようにランダムに配置するランダマイゼーションの方法を開発した。
 目撃率関数を中心間距離で測定した場合、ほとんどの種が集中分布を示したが、個体サイズを考慮して最短距離を測定するとランダム分布となる種もあった。これは、大きさを有し、他個体の侵入を許さない生物の空間分布パターンの定量的評価には、大きさを考慮した統計量が必要であることを示している。また、攻撃能力の強い種の近傍には攻撃能力の弱い種がいないことが明らかとなった。今後はサンゴの生活史に応じた分布パターンの解析が必要である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

<発表>
島谷健一郎(統計数理研究所)
 演題:大きさを有する個体空間分布パターンの定量化
 定量生物の会第2回年会
 日付:2010年1月10-11日

向 草世香(JSTさきがけ/長崎大学/琉球大学)
 演題:サンゴの個体群動態:局所的な個体間相互作用と全体のふるまい
 ISMシンポジウム「観察・データ・モデルの狭間を漂う統計数理:生態学における
  その役割と展望」
 日付:2010年3月3日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

島谷 健一郎

統計数理研究所

向 草世香

九州大学