平成272015)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

27−共研−1032

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

8

研究課題名

多項式カオス展開を用いた沿岸域流動水質モデルのパラメータ最適化技術の開発

フリガナ

代表者氏名

イリエ マサヤス

入江 政安

ローマ字

Irie Masayasu

所属機関

大阪大学

所属部局

大学院工学研究科地球総合工学専攻

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究は沿岸域における水環境シミュレーションの再現性向上のために,多項式カオス展開を活用したモデルパラメータの推定と最適化を行い,もって,モデルを最適化する手法の構築を行う.近年,流動水質モデルが細緻化することにより,調整しなければならいモデルパラメータの量は増大している.パラメータに実験値や観測値を用いたとしても,モデルに不適合な場合や,実験値や観測値がない場合も存在する.その場合,モデル使用者の経験に依る割合も大きくなり,パラメータ調整に非常に多くの時間を要することとなる.本研究では,計算結果のポストプロセッサとして,多項式カオス展開を行うことにより,最適なパラメータを発見する方法を用いて,水環境シミュレーションの高度化を図ることを最終的な目的としている.
 本年度においては大阪湾を例に,季節変動を伴う水質モデルパラメータのうち,植物プランクトンの増殖速度および沈降速度の最適化について検討した.流動水質モデルには,Regional Ocean Modeling System (ROMS)を用いた.水質モデルとしては,ROMSに接続されたモデルの一つであるFennel et al. (2006)による水質モデルに,リンに関する項目の追加等の改良が施されたモデルを用いた.計算領域は大阪湾およびその周辺海域とし,水平方向には500-1000 mに分割した直交座標系を,鉛直方向には20層で分割したs座標系を採用した.計算期間については助走計算期間を3ヶ月とし,本計算期間を2012年の1年間とした.
 多項式カオス展開はEnKFと比べて,少数のサンプルでパラメータの最適化が行える点に特徴があり,実計算時間の長い計算において,その長所が活きる.本検討では2つのパラメータを同時に最適化し,7x7の49ケースの計算を実施した.また,1年間を7.5日x49期間に分割し,各期間ごとに最適値を推定した.最適化にあたり,最小化するRMSEには,大阪湾奥部で1時間ごとに観測されている定点自読観測データのうち,クロロフィルの観測値および計算値の比較を用いた.
 増殖速度と沈降速度の最適値の季節変動は,変動が大きい結果となった.また,文献値と比べて,増殖速度の最適値は夏季で小さく,冬季で大きい値となった.沈降速度の最適値については,設定範囲内の最小値をとる区間が多かった一方で,異常増殖後に急激に大きくなる現象が認められた.これらの最適化されたパラメータを用いた場合,クロロフィルの年間変動を良く再現し,特に春季の異常増殖の再現性が向上した.
 上記の改善をもってしても,依然として,無機態窒素濃度の変動などには十分追従できておらず,今後も継続して,改善が必要である.また,特に,今回調整対象で無かった他のパラメータの設定不良が今回得られた結果に影響を及ぼしている可能性があり,他のモデルパラメータについても最適化を実施し,流動水質モデルの精度向上を図る予定である.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表
小田航平・岡田輝久・廣瀬文明・入江政安:季節変動を伴う水質モデルパラメータの多項式カオス展開による最適化に関する検討,平成28年度土木学会関西支部年次学術講演会要旨集,II-27,2016年6月

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催の実績がありません.

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

岡田 輝久

大阪大学

廣瀬 文明

大阪大学