平成292017)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

29−共研−2019

分野分類

統計数理研究所内分野分類

b

主要研究分野分類

3

研究課題名

脳神経の自励的同期活動を生成するミニマムネットワーク構造の推定

フリガナ

代表者氏名

オケ ヨシヒコ

尾家 慶彦

ローマ字

Oke Yoshihiko

所属機関

兵庫医科大学

所属部局

生理学講座生体機能部門

職  名

助教

配分経費

研究費

40千円

旅 費

38千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ニューロンやアストロサイトの自励的な同期活動は、脳内での情報伝達やネットワークの発達などに重要な機能である。この自励的同期活動の発生・維持は、局所的な神経回路や個々の細胞が持つ特性に依存していると考えられており、個々の細胞の挙動やネットワークのダイナミクスについては様々な研究が行われてきた。しかしながら、自励的活動に必要なネットワーク構造やネットワーク内での呼吸細胞の活性化順序(情報伝達経路)などネットワーク自体の持つ性質・機能と個々の呼吸細胞の活動の関連については未だ明らかにされていない。
そこで、本研究では、自励的同期活動の生成メカニズムに迫るために、自励的同期活動を行う組織の一例として呼吸リズムを生成する脳幹部呼吸中枢に注目し、その自励的同期活動を生成しているミニマムネットワーク構造を推定することを目指した。具体的には、呼吸リズム生成に関与するペースメーカー領域の一つであるpreBotzinger complex(preBotC)を含むスライス標本(呼吸スライス)を使用して、自励的同期活動を行うニューロン及びアストロサイト(以下、呼吸細胞という)の活動の同時記録を二光子顕微鏡によるカルシウムイメージング法で行い、その結果の詳細な時空間解析を実施した。
平成29年度は、興奮性ニューロン、GABA抑制性ニューロン、グリシン抑制性ニューロンが区別可能な遺伝子組換えマウスを使用して前年度までに記録した各種呼吸細胞の活動記録の解析をさらに進めた。ニューロン種の分類は、各種ニューロンに特異的に発現させたタンパク質の違いを利用する方法に加えて、細胞内カルシウム変動の波形の違いに基づいた分類も行った。この細胞内カルシウム変動の波形に基づく分類は、呼吸細胞を検出する際に行っていたpreBotC部位の局所フィールド電位記録(Local Field Potential : LFP)との類似性により行ったが、今後さらなる検討を行う予定である。これらの分類の結果、我々は5種類の呼吸細胞のグループを見出した。我々のこれまでの研究結果から、呼吸リズム形成時の呼吸細胞の活性化は確率的に起こっているが何らかの穏やかな規則があることが示唆されている。そこで、これら5種類のグループに属する呼吸細胞がどのような順番で活性化する傾向があるのかについて、呼吸リズム活動毎に呼吸細胞間の活性化順序を調べた。また、活性化順序の最初もしくは最後に活性化しやすい呼吸細胞についても調査を行った。その結果、呼吸細胞の種類が異なると活性化しやすい順番の傾向が違うこと、すなわち呼吸細胞の種類の違いが活性化順序の大枠を作っているのではないかと言うことが示唆されたため、呼吸リズム発生時のpreBotC内における神経伝達機構に関する新しいモデルを提唱した。データ解析においては、OGB-1イメージングデータのブレ補正, 時空間フィルタリング, adaptive threshold法による2値化画像処理, ニューロン検出とタイプの識別など一連の事前処理法を確立することができた。そして、遅延相関解析や振幅増強の統計検定により呼吸バーストと間欠的に同期するニューロンの検出に成功し、呼吸リズム生成のメカニズムの解明へ向けて重要な手がかりを見出した。今後は、実験的には光遺伝学やケージド化合物を利用して、各種ニューロンを人為的に活動させた状況で記録を行い、それらの結果の時系列解析や因果性解析に取り組み。ミニマルネットワーク構造の解明に迫る予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【論文発表】
無し.

【学会発表(国際学会)】
(1) Y. Oke, F. Miwakeichi, Y. Oku, S. Besser, J. Hirrlinger and S. Huelsmann. Neuronal type-dependent stochastic activation sequence among inspiratory neurons during rhythmic burst in the pre-Botzinger complex of the mice medulla slice. The 47th Annual Meeting of Society for Neuroscience (Neuroscience 2017), Washington DC, USA. (2017).
(2) F. Miwakeichi, Y. Oke, Y. Oku and S. Huelsmann. Detection of irregularly firing inspiratory neurons in the pre-Botzinger complex based on spatio-temporal optical imaging data analysis. The 47th Annual Meeting of Society for Neuroscience (Neuroscience 2017), Washington DC, USA. (2017).
(3) Y. Oke, F. Miwakeichi, Y. Oku, S. Besser, J. Hirrlinger and S. Huelsmann. General pattern of activation sequence among excitatory/inhibitory inspiratory neurons during rhythmic burst in the pre-Botzinger complex of the mice medulla slice. The 14th Oxford Conference on Modelling and Control of Breathing, Oxford, UK. (2017).


【学会発表(国内)】
無し

【シンポジウム・研究報告会等】
尾家慶彦, 三分一史和, 越久仁敬, S. Besser, J. Hirrlinger and S. Huelsmann. マウス延髄スライスの吸息性中枢内で吸息性細胞が自励的同期活動を行う際の細胞種依存的な活性化順序パターン. 第110回近畿生理学談話会, 神戸大学, 神戸, 日本 (2017).

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

主催した研究会は無い

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

染谷 博司

東海大学

三分一 史和

統計数理研究所