平成262014)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

26−共研−1020

分野分類

統計数理研究所内分野分類

g

主要研究分野分類

4

研究課題名

複雑系の秩序変数の臨界緩和解析

フリガナ

代表者氏名

カソノ カツミ

加園 克己

ローマ字

Kasono Katsumi

所属機関

東京慈恵会医科大学

所属部局

医学部医学科

職  名

講師

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

目的: 有限温度における液晶相や磁気相を、ある秩序状態から別の秩序状態へと緩和させる非平衡緩和シミュレーションを行う.これより,平衡状態における相転移点と臨界点上の物を,計算時間数に応じて,詳しく知る事ができる.
 2次元q状態ポッツ模型の q>4 において,臨界現象と非平衡緩和の計算を行い,クラスター間の相互作用を取り入れたマルチグリッド法の有効性を検証する.これは,単独クラスター法によるモンテカルロ法との比較を行って確かめる.

経過と成果: H24度の報告で行った計算結果に一部誤った点があった。それを修正し,追加の結果も報告する。
 2次元強磁性q状態(q>4)ポッツ模型は1次相転移を起こす.正方格子4と10状態のポッツ模型の転移点Ttにおいて,マルチグリッドタイプのモンテカルロ法を実行した.初期状態は秩序相より,無秩序相よりの 2タイプを選び,256x256 までのサイズで行った。
 I.磁化mの時間緩和曲線m(t)の収束は,単独クラスター法にくらべて数倍程度速い.ただしtはモンテカルロステップであり,単独クラスターとマルチグリッドでは条件が異なる。そして1ステップあたりのCPU時間は,後者の方が100倍程度大きい。後者はメモリ使用量も大きく,16倍程度消費する。今回のプログラムに限っては,単独クラスターの方がより効率的である。
 II.Tt付近の秩序変数,エネルギーの値については,単独クラスターとマルチグリッドでは,I.に示した違い以外に差は無い。物理量の平衡値への収束時間(tで測った)が速いか遅いかのみの差異しか認められない。
 今後の課題: マルチグリッド法プログラムの効率化は重要である。転移点において,単独クラスタ法では,秩序相-無秩序相の識別が明確であった(つまり磁気履歴を観察している).この性質を利用して,転移点や磁化の飛び量,潜熱を計算できた.マルチグリッド法プログラムを改良すれば,単独クラスタ法の利点を利用できると共に,今回より大きいサイズにおいてマルチグリッド法の優位性が期待できるからである。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

加園克己.マルチグリッド法による1次相転移点上の平衡状態探査時間II
日本物理学会第70回年会.東京,3月.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

小野 いく郎

東京工業大学

田村 義保

統計数理研究所