平成71995)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

7−共研−30

専門分類

3

研究課題名

最適制御による,弱者に優しい歩行環境作り

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ サチオ

中村 幸夫

ローマ字

所属機関

横浜ゴム株式会社

所属部局

研究本部

職  名

室長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

高齢化社会に向け,人の基本的な生活動作の一部である歩行運動に最適制御理論を適用して「快適な歩行路・床・靴とは何か」を明らかにする。高齢者の健康維持,寝たきり老人の予防に「歩行運動」が有効とされる社会的ニーズに応えつつ,関連分野の商品開発に人間工学からのアプローチを与えて活性化をはかる。


人は身体の一部で体重支持を行うが、この身体接触力を用いた歩き心地の評価に着手した。人の歩行における生体フィードバック特性を同定し、その特性から「人への優しさ」の指標化が出来ないかと考えた。具体的には、靴の内敷センサ(インソールセンサ)データを毎秒100コマでサンプリングし、歩行中の圧力分布変を接触面積分で荷重力に変換した。各被験者・路面・靴別での左右脚間の荷重データにARモデルを当てはめ「2変量間」の閉ループ・フィードバック制御特性を求めた。主観評価で良好な路面を「硬いビジネス靴」と「柔らかいウオーキング靴」で歩行した例で、前者では踵接地期の荷重が爪先離れ期の荷重を上回り、後者では逆になった。即ち、この軟らかい靴は人の前方への移動を助けているようである。この左右両脚の荷重データを2変量と見立てた閉ループ・フィードバック制御特性では、両方の靴とも左脚へのインパルス応答が右脚への応答を下回り、左脚の方が荷重変化に鈍感である為、この被験者は右脚より左脚の方が安定であり、左脚が体重支持の軸足と判断された。また、インパルス応答のピーク値に注目すると、ビジネス靴よりも、ウオーキング靴の方が左右差が小さくなった。欧米の整形外科医が、歩行障害者に治療用靴のシューインサートを処方するのに似た、左右差を小さくする靴の補装具としての側面が示唆された。表面に凹凸のある「盲人用点誘導タイル」での歩行では、応答曲線に乱れが見られ、微妙な歩きにくさを反映しているようである。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

「平成7年度・人間感覚計測応用技術の研究開発委託研究成果報告書」、新エネルギー
産業技術総合開発機構、社団法人・人間生活工学研究センター(発行予定)。
(著者名無し)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

従来この分野は,建築・土木工学が主体となり,構造解析の立場と,「好き嫌い」を答う官能評価とを組み合わせた手法が用いられたきた。最近になって,人の歩行をスポーツ工学の立場から解析することも開始されつつあるが,「歩き心地の評価」に歩行のメカニズムと最適制御理論を組み合わせた研究は未着手になっている。この分野で最も最近の成果が,和田等の「人間の立位姿勢制御におけるシステム同定」であり,本手法の歩行動作への拡張をとっかかりとする。人の歩行のふらつき,年齢・個人差の影響,路面・靴等の特性を取り込んだ確率モデルの作成は一企業の能力を越えた研究課題であり,統計数理研究所・稲城市立病院の和田院長グループとの共同研究が不可欠であると考える。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

粟田 修司

稲城市立病院

石黒 真木夫

統計数理研究所

加藤 比呂子

NTT

金森 克彦

横浜ゴム株式会社

高橋 弘光

横浜ゴム株式会社

和田 孝雄

稲城市立病院