平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−47

専門分類

5

研究課題名

平面や球面の分割と、流体力学への応用

フリガナ

代表者氏名

タカギ リュウジ

高木 隆司

ローマ字

所属機関

東京農工大学

所属部局

一般教育部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

今まで、平面や球面の分割を、幾何統計学、および振動する液滴の流体力学の問題として解析してきた。来年度は、球面液滴の振動モードの非線形解析により、波の山の位相部分が球面上をどのように占めるかという問題を扱う。同時に、幾何統計学の手法を適用して、それらのパターンの性質を調べる。


円のランダム充填における配置のゆらぎという現象を、次のような2つの視点から研究した。1つは、数値シミュレーションによって、逐次に充填していき、充填の順序と個々の円が支配する面積の関係を求めたものである。他の1つは、流れのある充填層内で、1層に配置した180個の円柱が、時間的に乱雑に配置を変える様子を実験的に観察したものである。
数値実験においては、逐次充填の際に、1.最初においた円の中心は、領域内で一様にランダムに選ばれる、2.後におかれる円の中心は、今までの円と重ならないように一様にランダムに選ばれる、3.円がどこにも置けなくなれば止める、という方法を採用した。
結果は、相対定着順位が80%くらいまでは、そのボロノイ多角形の面積は、平均面積より大きく、ゆっくり減少した。ところが、相対定着順位が80%をこえると、面積は急に減少した。これにより、「陣取り合戦では、遅れて来た者が損をする」という一般的な経験法則が確認されたことになる。
実験においては、11mm間隔の平行なアクリル板の間に、直径20mm、長さ10mmの円柱を、180個ほど乱雑に1層につめ、そのあいだに水を流し、円柱が時間的に配置を変える様子をビデオカメラで撮影した。各フレームの画像から、画像処理装置(フォトロン)を用いて、円柱が互いに接触してできるクラスターの面積を求めた。
その結果、クラスターの1個あたりの平均面積は時間的に乱雑に揺らぎ、その時系列信号はf-4/3というスペクトルをもつことが分かった(fは周波数)。このことは、大きなクラスターが比較的頻繁に現れたことを示す。このスペクトルはクラスターの発生の仕組みと流体力学的に密接に関連していると思われるが、その詳細は困難な問題であり、まだ解明されていない。
乱雑な配置の問題を、逐次ランダム充填のアンサンブルと、充填の時間的な変動という2つの側面について研究した。それらの間に関係があるのかどうかという問題は統計力学のエルゴート仮説に類似の問題を含み、非常に興味ある課題である。この点は将来、取り組んでいく予定である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

高木隆司、足立健一、吉安信雄、分散系浸透流における粒子凝集、信学技報Vol.93,No58(1993)(掲載予定)

種村正美、先住者ほど大きな場所を確保できる?、形の科学会シンポジウム、1992年11月25日
高木隆司、分散系浸透流における粒子凝集、非線形問題研究会(電子情報通信学会)、1993年5月21日(予定)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

平面や球面の分割に関する統計的な研究は、従来まで統計数理研究所の理工学関係部門で研究されている。特に、球面上の分割や充填をシミュレートする計算機プログラムが、最近、種村により開発された。このプログラムを、球面上の任意個の要素の配置に適用し、球形液滴の振動モードの実験結果と比較する。同時に、振動モードの非線形解析を行い、波の山が球面上をどのように占めるかを調べ、幾何統計学の結果と比較する。
共同研究として行なう意義は、液滴形状の研究を通して、パターン形成の機構という物理学の手法と、幾何統計学の手法の関連を明らかにするということである。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

佐野 理

東京農工大学

種村 正美

統計数理研究所