平成262014)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

26−共研−2025

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

3

研究課題名

歯科疾患実態調査資料のコウホート分析

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

Nakamura Takashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

[研究目的]
厚生労働省「歯科疾患実態調査」は昭和32年から6年ごとに実施されており、これまでの実施回数は10回を数える。本研究では、すでに蓄積してある9回分の歯科疾患実態調査データベースを基礎資料とし、24年に公表された第10回分を追加して、ベイズ型コウホートモデルによる分析を実施することを目的とした。

これまでは歯種別の齲蝕について研究を重ねてきたが、その分析に加えて、新たに8020運動などで注目されている一人当たりの歯の本数(以下歯数)についてコウホート分析を実施した。現在70歳台半ばになっている昭和15年前後生れの齲蝕の少ない世代や、最も若い世代における齲蝕減少が、歯数にどのように影響しているか、また、そのほか、日本人の歯科保健の習慣の変化、わが国の歯科医療制度の移り変わりの影響についても検討を加えることとした。

[研究成果]
2007年度から2009年度までの本共同利用研究を活用して蓄積した、昭和32年から平成17年までの9回分の歯科疾患実態調査データベースに、平成24年に公表された第10回調査によるデータを追加し、新たなコウホート表を作成した。その資料を用いて、一人当たり歯数を求めて、コウホート分析を行い、時代・年齢・世代別の差異を検討した。

その結果、歯数は、齲蝕の多い昭和35年生まれ世代でその前後に比べて減少していた。昭和32年から56年調査までは、65歳階級で男性11-13本、女性8-9本で推移していたが、その後調査を重ねるにつれて増加し最近では男女とも平均20本となるとともに、80歳以上で10本を超えていた。すなわち、昭和50年代まで加齢により減少していた歯数が、その後はそれに抗するように、生まれ年が若くなるほど増加していた。また最近10年間で、中高年の歯数の減少が、男性に比べて女性の方が緩やかになったため、昭和62年まで3-5本あった歯数の男女差は、現在ではほとんど無くなっていた。

コウホート分析では、年齢効果は3効果のうちで変化が最も大きい。時代効果は、昭和50年から62年調査で低くその後増加している。コウホート効果は、明治・大正生まれ世代で低く、昭和生まれ世代では齲蝕の多寡による増減が認められるものの全体に高いことなどが分かった。

以上より、我が国の成人の歯数は、世代が若くなるにつれて増加することが観察され、その傾向は今後も続くことが見込まれる。

これらの結果は、日本老年歯科医学会(福岡市、2014年)で報告した。さらに日本老年歯科医学会(横浜市、2015)および日本老年学会(同)で報告の予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

本研究に関連するこれまでの研究発表

[論文]
・那須 郁夫, 渡邉 寿子, 中村 隆, 堀内 俊孝 (2003). 日本人習慣飲酒のコウホート分析---国民栄養調査による---, 厚生の指標, 50(2), 1-8.

・那須 郁夫, 中村 隆, 森本 基 (1996). 永久歯現在歯のコウホート分析,歯科疾患実態調査資料を用いて, 老年歯科医学, 11(2), 88-99.

・那須 郁夫, 中村 隆, 森本 基 (1996). 歯科疾患実態調査資料による歯磨き回数のコウホート分析, 口腔衛生学会雑誌, 46(3), 306-317.

・那須 郁夫, 森本 基, 中村 隆 (1984). 下顎第1大臼歯齲蝕経験のコウホート分析-歯科疾患実態調査報告資料による-, 口腔衛生学会雑誌, 34(3), 240-247.

[学会発表]
・那須 郁夫, 中村 隆(2014).日本人下顎第一大臼歯現在歯数のコウホート分析,平成23年歯科疾患実態調査資料を加えて,日本老年歯科医学会,福岡市:電気ビル未来ホール,2014/6/14.

・那須 郁夫, 中村 隆, 生田 明敏, 新保 秀樹, 砂治國隆 (2013). 飲酒、喫煙、運動習慣のコウホート分析と各習慣の年齢、時代、世代効果の相互関係, 日本公衆衛生学会, 津市:三重県総合文化センター, 2013/10/25.

・那須 郁夫, 中村 隆, 生田 明敏, 新保 秀樹, 渡邉 寿子,砂治國隆 (2011). ベイズ型コウホート分析による日本人の飲酒習慣と喫煙習慣の比較検討, 日本公衆衛生学会, 秋田市:アトリオン, 2011/10/20.

・那須 郁夫, 中村 隆, 生田 明敏, 新保 秀樹, 渡邉 寿子,砂治國隆 (2010). コウホート分析による日本人の生活習慣、特に飲酒、喫煙、運動について, 日本公衆衛生学会, 千代田区:東京国際フォーラム, 2010/10/29.

・那須 郁夫, 中村 隆, 堀内 俊孝, 生田 明敏, 新保 秀樹, 渡邉 寿子,砂治國隆 (2009). 国民健康・栄養調査による日本人運動習慣のコウホート分析, 日本公衆衛生学会, 奈良市:奈良県文化会館, 2009/10/22.

・那須 郁夫, 中村 隆, 堀内 俊孝, 生田 明敏, 新保 秀樹, 渡邉 寿子, (2008). 国民健康・栄養調査による日本人飲酒習慣のコウホート分析, 日本公衆衛生学会, 福岡市:福岡国際会議場, 2008/11/7.

・那須 郁夫, 中村 隆, 堀内 俊孝, 宮崎 至洋, 生田 明敏, 新保 秀樹, 渡邉 寿子 (2008). 歯科疾患実態調査による日本人歯種別現在歯数のコウホート分析, 平成17年調査資料を加えて, 日本口腔衛生学会, 大宮市:大宮ソニックシティ, 2008/10/4.

・那須 郁夫, 中村 隆, 堀内 俊孝, 生田 明敏, 新保 秀樹, 渡邉 寿子, (2007). 国民健康・栄養調査による日本人喫煙習慣のコウホート分析, 日本公衆衛生学会, 松山市:愛媛県県民文化会館, 2007/10/25.

・那須 郁夫, 中村 隆, 堀内 俊孝, 宮崎 至洋, 生田 明敏, 新保 秀樹, 渡邉 寿子 (2007). 歯科疾患実態調査による日本人歯種別DMF歯数のコウホート分析, 平成17年調査資料を加えて, 日本口腔衛生学会, 江戸川区:タワーホール船堀, 2007/10/4.

・那須 郁夫, 中村 隆, 堀内 俊孝, 宮崎 至洋, 生田 明敏, 新保 秀樹, 渡邉 寿子 (2005). 若い世代の齲蝕減少の要因としての歯の崩出遅延, DMF歯数と現在歯数のコウホート分析による検討, 日本口腔衛生学会, 品川区:品川区立総合区民会館, 2005/10/8.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

ありませんでした。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

生田 明敏

日本大学

新保 秀樹

日本大学

那須 郁夫

日本大学