平成31991)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

3−共研−57

専門分類

7

研究課題名

質問票調査における回答変動要因の分析

フリガナ

代表者氏名

オノ マサジ

小野 雅司

ローマ字

所属機関

国立環境研究所

所属部局

環境健康部

職  名

室長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

多くの研究分野において,地域人口集団を対象に質問票を用いた調査研究が広く行われている。しかし,このような質問票調査においては,様々な要因により回答が大きく変動することは不可避である。
本研究では,具体的な調査データに基づいて,それらの質問票調査における回答変動要因を明らかにする。


大気汚染の健康影響調査において広く用いられている、呼吸器症状に関する標準質問票(ATS−DLD質問票)に関して、同一集団を対象とした数年間にわたる繰り返し調査結果に基づいて、同一対象者で観察された回答の変動を統計的手法により解析し、変動要因の解明を試みた。資料には、K県下の6小学校で昭和59年から昭和64年まで6年間継続実施した質問票調査結果を用いた。質問票調査の対象者は小学校学童とその両親である。
呼吸器症状のように長期間継続監視していくなかで症状等に変化が見られるものについては、本質的な症状の変化と誤った回答に起因する誤りとが混在する。これらを区別するために、対象者の生年月日のように観察期間中に変化しない項目と呼吸器症状のように変化する可能性のある項目とに分けて解析した。
[同一対象者における性・生年月日の不一致率]連続する2年の調査で同一人と確定されたペアについて性・生年月日の不一致の割合を調べた。児童、成人ともにいずれかの項目で不一致の見られたのは約2%であった。最も不一致の多かったのは出生日であった。
[同一対象者における呼吸器症状の回答変動]児童、成人の呼吸器症状について検討した。観察期間中のいずれかで「症状あり」と答えた者のうち、観察期間中すべての年度で「症状あり」と答えた者、さらに観察期間中に「新規に発症」したものや逆に観察期間中に症状の「寛解」したものが約半数を占めていた。一方、理論的に矛盾する回答パターンを示すものは、症状により異なるが、30〜70%にも達していた。
ATS−DLD質問票を用いた呼吸器症状調査は標準化されており、調査は留置自記式(児童分は両親が記入)で実施されるが、調査票回収後、記入もれや理論的な記入ミスについては電話等による再調査が行われており、生年月日の高い一致率に見られるように、一般の留置自記式法よりも回答の信頼性は高いと考えられる。しかし、経年的に変化する(可能性のある)呼吸器症状等については、被質問者の記憶に頼るところが大きく、今回得られた結果は決して不自然な値ではないと思われる。
次年度は、これらの結果を踏まえて、呼吸器症状等を中心に質問票調査に基づいてコホート分析を行う際の制約条件等の問題点を検討する予定である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

小野雅司、他:質問票調査における回答変動要因の分析、日本公衆衛生学会、1992年10月。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

大気汚染の健康影響調査において広く用いられている,呼吸器症状に関する標準質問票(ATS−DLD質問票)に関して,同一集団を対象とした数年間にわたる繰り返し調査結果に基づいて,統計的手法により変動要因の解明とその寄与度を明らかにするものである。
これまで,国立環境研究所並びに東京大学(研究担当者1,3,4)の共同研究により,フィールドにおける調査研究が実施され,多くの調査データの収集が進んできている。今後,貴研究所との共同研究により,前述した質問票調査における回答変動要因を統計的手法により明らかにする。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

高木 廣文

統計数理研究所

中井 里史

横浜国立大学

新田 裕史

国立環境研究所