平成21990)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

2−共研−9

専門分類

1

研究課題名

多変量解析における潜在変数モデルの理論と応用

フリガナ

代表者氏名

ヤナイ ハルオ

柳井 晴夫

ローマ字

所属機関

大学入試センター

所属部局

研究開発部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

13 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

入試データの解析には,受験者の能力を潜在変数とみなす潜在変数モデルが有効である。潜在変数モデルとしては,因子分析やLISREL(線形構造関係モデル),教育・心理統計の分野における項目反応理論などが良く知られている。近年は各種ソフトウェアの充実により,こうした潜在変数モデルの適用範囲が広がり適用例も急速に増えてきている。こうした動向をふまえて潜在変数モデルの理論と応用に関する総合的な研究を行う。


多変量解析における潜在変数モデルとしては,因子分析や共分散構造分析(LISRELを含む),そして教育心理統計の分野における項目反応理論が良く知られており,近年はソフトウェアの充実により,こうした潜在変数モデルの適用例も急速に増加している。これらの潜在変数モデルは主に心理学などの応用分野で発達してきたことから統計理論家の注目を集めることが少なかった。そのために,広く使われている手法でありながらその統計理論は必ずしも十分整備されているとは言い難い面がある。
本共同研究はこうした動向をふまえて,潜在変数モデルの理論と応用に関心をもつ計量心理研究者と数理統計研究者が共同して,潜在構造モデルの理論と応用の現状を探りその問題の所在を明らかにし解決の方向を探るという意味での潜在変数モデルに関する総合的研究を実施することを目的とし,以下に示す2回の研究集会を統計数理研究所において実施した。
(1)第1回研究集会:日時 平成2年9月27日(木)午後1時30分〜午後5時
1)前川眞一(大学入試センター) 制約条件下での潜在変数の分布の推定
2)小笠原春彦(鉄道総合技術研究所) 潜在変数または顕在変数に関する尺度不変因子分析モデルのある拡張
3)佐藤学(広島大学) 主因子分析で計算した因子負荷量の性質−単因子の場合−
4)市川雅教(東京外語大学)因子分析における共通性の推定量の漸近分布について
5)狩野裕(大阪府立大学) Robustness of the normal theory inference in linear latent variate models
6)藤越康祝(広島大学) Growth curve models with fixed and random effects
(2)第2回研究集会:日時 平成3年2月9日(土)午前10時〜午後4時
1)柳井晴夫(大学入試センター) 因子分析モデルにおけるいくつかの性質
2)佐藤学(広島大学) 因子分析模型のidentificationについて
3)渡辺美智子(関西大学) 平均および分散共分散行列におけるロバストな推定法について
4)猪原正守(大阪電気通信大学)・狩野裕(大阪府立大学) A Structure of the Occurrence of Improper Solutions in Factor Analysis Model
5)市川雅教(東京外語大学) 因子分析におけるある行列の固有値の推定量の漸近分布とその応用
6)豊田秀樹(大学入試センター) 共分散構造分析の適用的研究−進路指導担当教師に対する調査データを用いて−
7)繁桝算男(東京工業大学) 補助情報を用いる項目反応理論
8)小西貞則(統計数理研究所) Multivariate familial dataの統計的解析
上記に示すように,2回の研究集会で計14の発表があり,その内容も,1)因子分析(基本モデル,識別可能性,共通性,不適解,固有値の漸進分布,ロバスト推定法),2)共分散構造分析,3)項目反応理論,4)成長曲線モデル,5)多変量familial dataの解析と,多岐にわたり多変量解析における各種の潜在変数モデルを網羅するものであった。単に理論的問題だけでなく,これまで例えば因子分析について指摘されることの多い,理論と応用上の諸問題における乖離をせばめるような観点からの議論が行われた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

上記の研究集会の各発表の要旨を統計数理に投稿する予定である。
〔発表論文〕
1)Haruo Yanai & Masanori Ichikawa(1990),NEW LOWER AND UPPER BOUNDS FORCOMMUNALITY IN FACTOR ANALYSIS,Psychometrika−vol.55,No.2,405−410
2)Yutaka Kano(1990),NONITERATIVE ESTIMATION AND THE CHOICE OF THE NUMBER OF FACTORS IN EXPLORATORY FACTOR ANALYSIS,Psychometrika−vol.55,No.2,277−291


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

潜在変数モデルは,歴史的には古いものであるが,心理学などの応用分野で発達してきたことから統計理論家の注目を集めることが少なかった。そのために,広く使われている手法でありながらその統計的理論は必ずしも十分に整備されていない。また,応用の観点からは,近年提案されている各種の潜在変数モデルは,多数の母数を含んでいるために,計算法などにも難しい問題がある。本研究では,理論と応用に関心を持つ研究者が参加することにより,潜在変数モデルの理論と応用の現状を探り問題の所在を明らかにするとともに解決の方向を探る。また,統計数理研究所と共同研究を行う必要性は,(1)潜在変数モデルに関する文献の豊富さ,(2)潜在変数モデルに数理統計的立場から関心を持つ研究者が多数いること,等の理由による。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

市川 雅教

東京外国語大学

小笠原 春彦

(財)鉄道総合技術研究所

狩野 裕

筑波大学

小西 貞則

九州大学

駒澤 勉

統計数理研究所

佐藤 学

広島大学

繁桝 算男

東京大学

高木 廣文

統計数理研究所

豊田 秀樹

大学入試センター

藤越 康祝

広島大学

前川 眞一

大学入試センター

渡辺 美智子

東洋大学