平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−107

専門分類

6

研究課題名

地震の群に関する統計的研究

フリガナ

代表者氏名

オガタ ヨシヒコ

尾形 良彦

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

群は地震の起き方の特徴である。余震群・群発・前震群などの時空間パターンを統計的に研究して、その違いを強調する特徴を見い出し、地震の確率的予測に参考としたい。


ある地域で複数の地震が連発したとき、この地震がより大きな地震の前震であるか否かを、確率的に計るために統計的調査をした。様々の可能性を熟考の上、地震群の中の地震間のマグニチュード差、発震時刻の差、震源間の距離を調査事項とした。データとしておもに調べたのは気象庁震源カタログ(1926-1991)でマグニチュード4以上のものである。これを定められたアルゴリズムによって時空間におけるクラスター(群れ)に分け、前震群と群発地震および余震の分類を行ない、これを調査対象とした。
群れの中で最大の地震を本震と定義し、本震以前に起きた地震を先行地震(プレショック)と言う。本震と先行地震の最大地震のマグニチュード差が0.45以上の場合、先行地震は前震と呼び、そうでない場合は群発型の先行地震という。
まず本震との関係で先行地震を調べるために、各群れの本震を原点とするようにして、先行地震の時空間的な重ね合わせをして見ると次の事が確認できた。(1)本震を原点として時間を逆向きにした場合の先行地震の発生率が改良大森公式にしたがう。
(2)先行地震の単位面積当たりの発生率は本震との距離の逆べき則になることである。これらの法則のパラメータを最尤法で求め、それぞれ時間と距離に関して発生率が一様になるように座標のスケーリングをし、先行地震のプロットをすると前震に関しては空間的にドーナツパタンが明瞭にみられ、これは時間的に縮小して本震に収束している。
これに対して群発型先行地震についてはそれほど明確でない。先行地震の中の前震の占める割合は時間的には本震前半日前後が最大であるような凸型になっており、距離的には本震に近づくにしたがって単調に減少することが分かった。
地震予測的な観点から、地震群の始まりの高々10個について相互関係を調べてみた。これは点過程の二次モーメントの統計量とも言えるが、具体的には群の中の任意の地震の対について先行する方を原点にとって重ね合わせをするものである。群れの大勢を占める本震余震型も含めた全ての地震群の中で、前震型の占める相対頻度は次のような特徴がある。
(1)発震時刻の差としては短い時間差に集中しているが、群れ全体の時間差が一様になる様に時間差を変換すると前震は数時間前後で最大であるような凸型である事が分かる。
(2)地震同士の距離について同様に適当に変換すると10キロメートル以内に最大となるような凸型である。(3)マグニチュード差が大きいほど前震である相対頻度が大きい。
ここで得られた結果の安定性は対照的に異なったクラスターアルゴリズムや地震の時空間的な検出率を考慮した小地震の足切りで得られた群れのデータでも見ることが出来る。日本の国立大学によって編集された最近の微小地震カタログや国際地震センター(ISC)で編集されたM5以上の世界の地震についても多かれ少なかれ同様の性質が確認された。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Ogata, Y,. Utsu, T. and Katsura, K. Statistical Features of Foreshocks in Comparison with Earthquake Clusters, Research Memorandom No. 453, 1992年10月20日

尾形良彦,Statistical Features of Foreshocks in Comparison with Earthquake Clusters, 国際地震・地球内部物理学会(IASPEI)第27回大会、IASPEIシンポジウムS6「地震予知」 (招待講演) 1994年1月10−21 日(予定)Victoria University of Wellington, New Zealand

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

定期的に発刊されている地震カタログを使用して、点過程の統計的手法を応用することによって一定の結論を引き出したい。地震の性質を熟知した地震研究者と点過程の統計解析を手がける統計学者が共同して新しい立場からこの問題を追求したい。解析には統計数理研究所の大型計算機などの計算環境を必要とする。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

宇津 徳治

東京大学