平成19（2007）年度　一般研究２実施報告書

課題番号	19−共研−2029		分野分類			統計数理研究所内分野分類			d
						主要研究分野分類			7
研究課題名	医療サプライチェーンとしての病棟運営評価方法について（２）
フリガナ 代表者氏名	オオノ　ユウコ 大野　ゆう子				ローマ字		OHNO, Yuko
所属機関	大阪大学
所属部局	大学院医学系研究科保健学専攻
職　　名	教授
配分経費	研究費	40千円		旅　費		0千円		研究参加者数		3　人

研究目的と成果（経過）の概要

　目的
常時、安全に最適治療環境を提供すること、すなわち医療サプライチェーンとして病棟業務全体を把握することが重要であるという視点から、何をモニタリングし、どのように評価すれば「いい病棟、病院」となるのか明らかにすることを目的に、病棟業務調査を行いつつ検討した。
研究経過
１．看護需要の病棟間比較：看護必要度指標の検討およびその病棟間比較に関する研究
厚生労働省は2006年度診療報酬改訂において手厚い看護体制に対する報酬加算を実施した。しかし実際の看護需要、医療需要と乖離があるとして2008年度診療報酬改訂において現行制度を見直し「看護必要度」に応じた指標を設け必要度の高い病院に加算する予定である。しかし「看護必要度」測定のために提案された病棟業務調査票についてはいろいろな問題が指摘されている。本研究では地域中核病院の全６病棟における業務内容と業務量の把握および病棟特性検討を目的に、当該調査票と研究者らのタイムスタディ調査結果をもとに増補した調査票、さらに従来提案されている看護評価基準等を用い、病棟業務を調査し看護必要度の検討を行った。その結果、患者年齢、患者の心身的負担などを考慮した看護を目指すことにより却って調査票から推計される看護必要度が下がる可能性、患者の見守り・世話業務に関する評価基準設定の重要性が示唆された。
２．治療技術評価のためのアウトカム指標の検討
受療患者の生存率は施設別治療成績の重要な指標であるが、社会における医療需要という観点では部位別がん罹患者の平均的「要医療期間」の推計が重要である。また、治療成績向上をいち早く検出するためには、予後をモニタリングする必要があるが、より短い観察期間から変動を検出する方法の検討は有用である。本研究では地域がん登録から算出した部位別相対生存率をもとに、要医療期間推定法と治療成績変動検出法を検討した。要医療期間については、ある時点における生存者が健常人と同じ予後をたどる「治癒者」とそれ以外の「非治癒者」から構成されるとする治癒モデルを用いて検討し、生存人数の大小に影響をうけにくい「非治癒者数／生存者数」が一定値以下となる時点までを指標とする方法を提案した。治癒成績変動は３状態マルコフモデル（健常人と同じ予後をたどる「治癒群」、再発の可能性のある「非治癒群」、「死亡群」）を用いて部位別に検討し、乳房、肝臓などを除きほぼ３年の観察により状態推移確率を求められることなどを見出した。

当該研究に関する情報源（論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等）

論文発表
Yuri Ito, Yuko Ohno, Bernard Rachet, Michel P Coleman, Hideaki Tsukuma, Akira Oshima
Cancer survival trends in Osaka, Japan: the influence of age and stage by diagnosis
Jpn J Clin Oncol, vol.37: 452-458, 2007

学会発表
Aya Murakami, Yuko Ohno, Nana Tabata, Sachiko Shimizu
The estimation of the cure probability by markov model
29th Annual Meeting of the International Association of Cancer Registries Programme and Book of Abstracts: 107, 2007
Nana Tabata, Yuko Ohno, Aya Murakami, Daisuke Furushima, Yuri Ito
Follow-up time required for cure of cancer patients using mixture cure models In Osaka, Japan
29th Annual Meeting of the International Association of Cancer Registries Programme and Book of Abstracts: 139, 2007
Yuko Mochimaru, Yuko Ohno, Hodaka Numasaki, Teruki Teshima, Yuri Ito, Hideaki Tsukuma
Trend of introduction of radiation therapy for breast cancer treatment in Osaka,Japan −based on data from Osaka cancer Registry−
The 15th anniversary of Hiroshima Cancer Seminar Foundation The 17th International symposium：42,2007
田端奈々, 大野ゆう子, 伊藤ゆり, 早田みどり
Period法による長崎県がん登録資料を用いた５年有病数推計
日本公衆衛生雑誌, 54: 240, 2007
持丸祐子, 大野ゆう子, 田端奈々, 伊藤ゆり, 井岡亜希子
乳がん治療における放射線治療導入の状況〜大阪府がん登録に基づく分析〜
日本公衆衛生雑誌, 54: 239-240, 2007
筒井杏奈, 大野ゆう子, 田端奈々, 清水佐知子, 伊藤ゆり, 井岡亜希子
大阪府における小児がん受療に関する罹患の地域差の現状把握
日本公衆衛生雑誌, 54: 240, 2007
志岐直美, 大野ゆう子, 田端奈々, 清水佐知子, 伊藤ゆり, 井岡亜希子
大阪府における子宮がん患者の地域別生存率と患者動向に関する研究
日本公衆衛生雑誌, 54: 240, 2007

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

　なし

研究参加者一覧
氏名	所属機関
中村　隆	統計数理研究所
門田　守人	大阪大学