平成232011)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

23−共研−4303

分野分類

統計数理研究所内分野分類

c

主要研究分野分類

3

研究課題名

マメ科植物ー根粒菌相互作用に関わる共生遺伝子のゲノム網羅的探索と実験的検証

重点テーマ

ゲノム多様性と進化の統計数理

フリガナ

代表者氏名

アオキ セイシロウ

青木 誠志郎

ローマ字

Aoki Seishiro

所属機関

東京大学大学院総合文化研究科

所属部局

広域科学専攻広域システム科学系

職  名

研究員

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

研究の目的
万を超えるゲノム計画が進み莫大な配列情報が蓄積する現在、従来の比較ゲノミクスでなされてきた「配列類似性による遺伝子機能推定」を拡充した解析法が望まれている。そこで本研究では新しく『進化的特徴の類似性に基づく遺伝子機能推定法』を開発することにより、機能進化ゲノミクス(Functional Evolutionary Genomics)分野を展開したいと考えている。ここでは『注目する形質にとって重要な遺伝子と同じ進化的特徴をもつ(機能未知)遺伝子を、ゲノムを網羅して数理的に探索し、実験的に形質への関与(機能)を検証すること』を具体的目標とする。ここから本研究の目的は(1)分子生物学的には「機能未知遺伝子の進化的機能推定法の開発」(2)進化学的には「推定遺伝子の祖先機能復元実験による進化理論の実証」となる。
研究の成果
 我々の解析により、いくつかの共生関連遺伝子に特有な進化的特徴がみつかった。例えば、遺伝子重複と正の自然選択、遺伝子機能の平行進化、遺伝子水平移行に伴う宿主特異性進化のような進化現象が可能性として挙げられる。このような共生遺伝子の特徴のうち、遺伝子水平移行と遺伝子重複に焦点を当て、既知の根粒菌感染遺伝子nodA-nodZについて解析したところ、23遺伝子のうち18遺伝子が予測可能であることがわかった。そこでMesorhizobiumゲノムの全蛋白質を用い解析した結果、共生アイランド全体の検出に成功した。一方でこの領域内に数多くの共生とは関係のないハウスキーピング遺伝子の存在が推測され、ここから複数回の共生アイランド水平移行とゲノム内遺伝子転移の可能性が示された。さらに本解析による機能推定は1つ1つの共生関連遺伝子(nod, nol, nif, fix genes)の検出に成功し、他にも共生アイランドの外に今まで共生への関与が知られていなかった数多くの遺伝子(アデニル酸サイクレース、転写因子、機能未知遺伝子群(未発見の共生アイランドの可能性))が見つかった。
 これらの推定で、本当に新しい共生関連遺伝子を発見し得たのかどうかを調べるため、それら推定遺伝子の遺伝子破壊菌株を作成した。植物に感染させ、共生機能の実験的検証を行い、いくつかの試行的な実験結果を得た。過去の多くの研究で見つかった共生関連遺伝子では、その破壊により根粒形成能力が低下することがわかっている。本研究の推定遺伝子の破壊でも、確かにそのような感染数低下型の遺伝子がいくつか見つかったが、逆に遺伝子破壊により感染数が増える遺伝子を発見した。さらに本課題では、数多くのその他の遺伝子の機能について、大量遺伝子破壊により解析する予定である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表
第8回クラミドモナスワークショップ
「ボルボックス目に存在するアンコンベンショナルアクチンNAPについて」
箕浦高子・青木誠志郎
第64回細胞生物学会
"Phylogenic analyses have revealed a unique origin of NAP, a Volvocales unconventional actin, in Chlolophyta"
Takako Kato-Minoura, Kumiko Karino, Nobuyuki Akimoto, Norito Yoshiga, and Seishiro Aoki

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

佐々木顕先生,間野修平先生の主催なさった以下の研究会に参加いたしました。

統数研共同利用重点型研究集会(10/25,26, 12/19,20)

テーマ
ゲノム多様性と進化の統計数理
コーディネーター 佐々木顕,間野修平

青木誠志郎 「マメ科植物-根粒菌相互作用に関わる共生遺伝子の起源とゲノム網羅的な探索」10/26
岩崎渉 「 期待値最大化法に基づいたゲノム進化過程の再構築」10/26

日時
2011年10/25,26, 12/19,20
場所
統計数理研究所
参加人数
1日あたり、30-50人程度と考えております(詳しくは佐々木顕先生,間野修平先生にお伺いください)

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 元己

東京大学大学院総合文化研究科

岩崎 渉

東京大学 大気海洋研究所